記事の概要
管理人によるボトルのレビューを通して、皆様にその魅力を伝える記事です。
今回は…
「グレンモーレンジ A-TALE-OF-TOKYO」
当記事では,このボトルについて
などなど詳しく解説していきます!!
\\執筆者情報//
初谷(はつがい)
ウイスキーに関わるあらゆる情報をまとめ,「ウイスキーを知りながらより深く楽しめる記事」を発信しています。
【Shop】ウイスキー専門店『Drinkable books』
【経歴】東京都立大卒|元公務員・ネット酒屋開業
【資格】JWRC公認ウイスキーエキスパート|ウイスキー検定2級
【その他】バンド「Candid moment」のドラマー
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「グレンモーレンジ」ってなに?
グレンモーレンジの解説
- ブランドと蒸留所
『グレンモーレンジ』は,スコットランドの北ハイランド地方に建つ,モエヘネシー・ルイヴィトン社が所有する,グレンモーレンジ蒸留所が生産する,シングルモルトウイスキーのブランドになります。
グレンモーレンジのウイスキーは,100年以上昔より「テインの16人の男たち」によって作られていると言われてきましたが,これは紛う方なき事実であり,生産量が当時の100倍を超える現在においても,コンピューター管理を活用しつつ,実際に16人の職人の手によって生産が行われています。
そしてそのチームをまとめるのが蒸留所の最高製造責任者である”ビル・ラムズデン博士”であり,古くから残る伝統的な蒸留所でありながら,彼の好奇心旺盛なマインドの元で,これまで誰も試したことがないようなチャレンジングな製法が編み出されています。特に樽熟成については,「樽熟成のパイオニア」という異名がつけられるほどに長けており,独創的な試みが多く行われてきた蒸留所として広く認知されています。
- 製法の特徴
グレンモーレンジ蒸留所のウイスキー作りでは,まずフェノール値2ppm程度のライトリーピーテッド麦芽を原料とし,ターロギーの泉やケルピーの泉から引いてきた,ミネラルを多く含んだ硬水によって仕込みが行われます。発酵の際にはマウリ社製の液状酵母を添加し,約52時間をかけてアルコールの生成を促すことにより,ウイスキーの元となる,度数8%で重厚な香味のウォッシュを獲得しています。
そして最も象徴的なのが,蒸留工程に使用されるポットスチルであり,5.14mというスコットランド最大級の高さを誇る異形のスチルが採用されています。このようなスチルでは,蒸留時にアルコールの蒸気がラインアームへ流出するのが困難となり,より華やかでよりフルーティな性質を持ったアルコールのみを厳選することが可能となります。その結果としてグレンモーレンジの華やかかつクリーンな原酒の下地が完成しており,最終的には「樽熟成のパイオニア」と称される,熟成工程に対する卓越した知見と好奇心を活かしつつ,多様な樽による長期熟成によって無限の可能性が表現されています!
- A-TALE-OF(物語)シリーズ
「A-TALE-OF」は2020年から続く,ウイスキーの諸元に何かしらの物語性を持たせた数量限定販売のシリーズ商品であり,CAKE→WINTER→FOREST,そして今回のTOKYOと,これまで合計4本のボトルがリリースされてきました。その物語は,ラムズデン博士のふとした思いつきが始まりとなっているケースが多く,例えば前回リリースの「FOREST」では森の散策中に自然から得たインスピレーションをもとに,麦芽の乾燥に様々なボタニカルを採用するという革新的な試みが実施されています。
そして今作の「TOKYO」は,博士のお気に入りの都市である東京から,ファッション・フード・カルチャーなどの様々なコントラストを感じ取り,ジャパニーズオークとも呼ばれる希少なミズナラカスクを活用した斬新な試みを具現化。巡りめく様相を変化させる大都市東京の魅力を,ウイスキーの味わいにうまく落とし込んだ逸品となっています。
「グレンモーレンジ TOKYO」ボトルの特徴
\\ボトル外観//
\\ボトル諸元//
ボトル名 | グレンモーレンジ A-TALE-OF-TOKYO |
地域 | スコットランド,北ハイランド |
種類 | シングルモルト |
原料 | モルト |
容量 | 700ml |
度数 | 46% |
希望小売価格 | 13,200円(税別) |
\\製法と特徴//
- A-TALE-OF(物語)シリーズの2023年版新作!
▶︎この『TOKYO』は2020年から続く物語シリーズの第4弾に当たるボトル。蒸留所の最高責任者のビル・ラムズデン博士が,これまで幾度も訪れた東京からインスピレーションを受けて制作にあたった,和テイスト特化型の限定商品です。 - 日本原産の貴重なミズナラオーク樽を熟成に活用
▶︎ミズナラ樽による熟成では,お香のような甘い香木感や,トフィーのようなスイートな甘さが原酒に付与される。ラムズデン博士は,これを活用して東京のイメージを具現化しています。 - バーボン樽・シェリー樽原酒もブレンド
▶︎熟成に使用されるベーシックな樽で熟成された原酒も混合することにより,アクセントとなるペッパーやビターチェリーなど,土台となる風味がしっかりと形成されています。
「グレンモーレンジ TOKYO」テイスティングレビュー
さてさて、それでは早速「グレンモーレンジ A-TALE-OF-TOKYO」をテイスティングレビューしていきます!
色味
『グレンモーレンジ A-TALE-OF-TOKYO』の色味については,中程度よりは薄く,やや独特な曇りを持っている印象があり,視覚的にはオレンジっぽい金色といった感じに捉えられます。
客観的な指標としてwhiskys.co.ukの色見本に準えて評価すると,"Deep copper"くらいであると言えるでしょう。
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香り
- 第一印象
濃いオレンジジャム,強力なミズナラの芳香,甘い樽熟感,香木,僅かに金木犀っぽ花感,焼き芋のほくほく感,クリーミーな下地
アルコールの刺激はほとんどないですね!
- 経時変化で見える要素
りんごシナモン,お香スモーク,いちごケーキ,入浴剤系のフローラル
筆者の一言
香りはダイレクトに伝わる甘みが非常に強く,特にミズナラの芳香が想像以上に前面に出ている印象がありました。
ネガティブな要素はほとんどなく,どことなく寒くなり始めた日本の秋のような哀愁を感じるエモエモな構成。これからの季節にぴったりな香りでした!
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味わい
- 第一印象
ミズナラの強い伽羅香,濃いダークチェリー,とても甘い香木,トフィー,モーレンジらしいミネラル感,フレッシュなシトラス
甘み>アルコール刺激でとても飲みやすいです!
- 経時変化で見える要素
アクセントになるペッパー,オレンジジャム,ベリーの酸味,香ばしいナッツ
- 余韻に残る要素
ミズナラの芳香,爽快なハーブ,ホワイトペッパー
筆者の一言
味わいにおいても,ミズナラ樽の個性がうまく反映されており,随所に散りばめられた和の要素からは,様々な文化が犇く東京の街の多様性に近しいものを感じました。
全体的にはフルーツや木の甘みがベースに広がり,ところどころで突き抜けたベリーやペッパーが顔を出すような印象。深く記憶に残る個性的な一杯でした!
「グレンモーレンジ TOKYO」総評
最後に総評に入りたいと思います!まずはレーダーチャートから!
さてさて、気になる点数は…
点数の理由と評価
- 香り:5/5|味わい:5/5
まず「グレンモーレンジ TOKYO」の香りと味わいについては,アルコールや未熟感などのネガティブな要素がほとんどなく,ミズナラの芳香を主体にバランスが整えられた,非常に飲みやすい仕上がりとなっていました。ミズナラ樽原酒のみではなく,バーボン樽原酒やシェリー樽原酒も使っていることもあり,ボディの厚みもしっかりと出ており,華やかで軽快ながらも満足感が強い印象でした。
個人的な感想としては,金木犀や焼き芋のような,どことなく日本の秋を連想させる要素が随所から感じられ,いろんな意味でしっかりと東京が表現されているなぁ,と少々感動してしまいました…。限定品ながらこれからの季節に是非飲んでおきたい1本ですね!
- 初心者向け度:4/5
続いて初心者向けかどうかという観点で「グレンモーレンジ TOKYO」を見てみると,割と適しているということができます。
というのも,味わいの主体がジャパニーズオークとも呼ばれるミズナラの強い芳香であり,飲みやすいグレンモーレンジの下地に,個性的な和の要素が乗っかっているような構成でした。要するに飲みやすさとジャパニーズ感がとても分かりやすく,融合しているので,とても日本人向けの構成になっているなと感じています。
しかしながら,ミズナラの風味を苦手に感じる人も一部いるようなので,全ての初心者に手放しでおすすめすることは出来ません。興味が躊躇に勝った人だけがチャレンジするようにしてください。
- 入手性:1/5|コスパ:4/5
最後に「グレンモーレンジ TOKYO」の入手性とコスパについては,入手性は最悪,コスパはかなり良いということができるでしょう。
第一にこのボトルは数量限定販売商品であり,尚且つ世界的にもメジャーなグレンモーレンジ。しかも大人気のミズナラ樽が使用されたウイスキーです。異様な需要の集中を避けることは出来ないと考えられ,定常的な入手は困難を極めるでしょう。
しかし価格帯については公式価格が税込15,000円程度と意外にも良心的(まあ高いが)であり,個人的な心理としては,もし変える機会に遭遇したのであれば,是非とも買いたいというレベルにはコスパの良さを感じています。なんといっても季節感と東京の都市を感じさせる風味は十分過ぎるほどに魅力的でしたから…。とにかく貴重なウイスキーであることは間違いありませんので,どこかしらで飲む機会があった際には,是非とも一杯試していただきたいなぁと強く思います!