記事の概要
現在ウイスキー作りが最も発展している国といえば
「スコットランド」ですが,
その中でも圧倒的な蒸留所の密度を誇り,世界的に著名なウイスキーが数多く作られている地域が「スペイサイド」になります。
この地域のウイスキーは,その多くが万人に愛されうるノンピート麦芽による華やかな王道スタイルを特徴としたものが多く,スコッチウイスキーにおける売上ランキングのTOP層にも,多くのスペイサイドモルトが名を連ねています。
この記事では,そんな多くの人から愛されるスペイサイドモルトを今一度振り返ってみようということで,本当に美味しい銘柄を10本厳選してきましたのでそれぞれご紹介いたします。
\\執筆者情報//
初谷(はつがい)
ウイスキーに関わるあらゆる情報をまとめ,「ウイスキーを知りながらより深く楽しめる記事」を発信しています。
【Shop】ウイスキー専門店『Drinkable books』
【経歴】東京都立大卒|元公務員・ネット酒屋開業
【資格】JWRC公認ウイスキーエキスパート|ウイスキー検定2級
【その他】バンド「Candid moment」のドラマー
各種SNSも運用中!
華やかな王道スタイル!
本当に美味しいスペイサイドモルト10選
グレングラント アルボラリス
度数 | 40% |
容量 | 700ml |
種類 | シングルモルト |
ポイント
『グレングラント』は,スペイサイドのローゼス地区に所在する,グレングラント蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
現在の蒸留所の所有者はイタリアのカンパリ社で,そのシングルモルトは特にイタリア国内において全体の70%ほどのシェアを占めていたり,世界のシングルモルト売上ランキングでもTOP10に入っていたり,なにかと根強い人気を誇示する老舗ブランドです。そのウイスキー作りでは,スペイサイドらしいノンピートタイプの麦芽をメインに使用し,スコットランドでも他に類を見ないストゥーパ型と呼ばれる特殊な形状のポットスチルで蒸留が行われているのがポイント。加えてこのポットスチルには,軽やかでクリーンなアルコールを厳選する精留器が取り付けられているのが非常に個性的です。
そしてこのアルボラリスは,木漏れ日を意味するアルボラリスをタイトルに据え,バーボン樽とシェリー樽のヴァッティングで作られる逸品で,シングルモルト界で最高峰のコスパの良さを誇る良銘柄。その味わいでは,圧倒的に華々しいビビッドな柑橘の果実感や,青リンゴのようなフレッシュな香味,そしてほのかに後味に残るビターな樽感など,軽やかかつ飲みやすさに特化したテイストを楽しむことができます。
香り
レモンとオレンジ,ビターな樽香,ハーブ,蜂蜜バニラ,ドライフルーツ,草原感
味わい
バニラ,穀物感,甘いドライフルーツ,フレッシュな柑橘感,草原感,スパイス
▽
グレンキース ディスティラリーエディション
度数 | 40% |
容量 | 700ml |
種類 | シングルモルト |
ポイント
『グレンキース』は,スコットランドのスペイサイド地方に所在する,ペルノリカール社傘下のグレンキース蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
同蒸留所はスペイサイドの中でも蒸留所が密集しているキースの街において,1957年にストラスアイラの第2蒸留所として創業された経緯を持つ蒸留所です。またグレンキースは,1999年から2013年にかけては閉鎖されていたものの,創業当時から主にアメリカ市場で評価を受けていた,ライトテイストなブレンデッドに適した原酒を作るべく,軽やかな風味のウイスキー作りが行われており,現在も同様のスタイルでウイスキーが作られています。
そしてこのグレンキース・ディスティラリーエディションは,蒸留所再開後にリリースされた新生グレンキースを代表する標準的なオフィシャルシングルモルト。その味わいでは,傑出した個性は持たないものの,洋梨やオレンジ系の華やかな果実感や,フローラルな蜂蜜,そして穀物系の香ばしい甘みなど,典型的な華やかさを楽しむことができます。
香り
軽やかな洋梨,フレッシュなオレンジ感,はちみつレモン,まろやかスパイス,木
味わい
ライトな柑橘の華やかさ,洋梨,蜂蜜,シリアルクッキー,僅かにスパイシー感
▽
ノッカンドゥ12年
度数 | 43% |
容量 | 700ml |
種類 | シングルモルト |
ポイント
『ノッカンドゥ』は,スコットランドのスペイサイド地方に所在する,ディアジオ社傘下のノッカンドゥ蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
同蒸留所のウイスキー作りは非常に伝統的で,原料の麦芽は古き良きスペイサイドモルトのようにごく僅かにピートが焚かれたスタイルとされているほか,木製のウォッシュバックによる発酵や,やや年季の入ったポットスチルでの蒸留などが展開されています。またその年間生産量は140万リットルと中規模程度ですが,その9割ほどがブレンデッドブランドの『J&B』に使用されているため,シングルモルトリリースの分量はあまり多く無いのが特徴です。
そしてこのノッカンドゥ12年は,同蒸留所の最も標準的なラインナップであり,バーボン樽由来の原酒が9割,シェリー樽由来の原酒が1割という構成で作られている逸品。その味わいでは,モルトクッキーのような穀物系の香ばしい甘さや,オレンジ香る紅茶のようなフローラル&フルーティな印象など,王道なスペイサイドスタイルの洗練された華やかさを楽しむことができます。
香り
穀物クッキーの香ばしさ,甘いオレンジ,フローラルな紅茶,シナモンスパイシー
味わい
マスカット&オレンジ,紅茶とはちみつ,香ばしい穀物クッキー,シナモン,樽感
▽
オルトモア12年
度数 | 46% |
容量 | 700ml |
種類 | シングルモルト |
ポイント
『オルトモア』は,スコットランドのスペイサイド地方に所在する,バカルディ社傘下のオルトモア蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
同蒸留所の周辺地域は,霧が深い湿地という意味を込めて「フォギーモス」と呼ばれており,豊富な水源と湿潤な気候から,ウイスキー作りには最適な土地として古くから知られていました。またオルトモアは「デュワーズ」のキーモルトにも抜擢されていますが,そのウイスキー作りでは,ノンピート麦芽を原料とした華やかなスペイサイドスタイルにて,年間320万リットル程度のウイスキーが生産されており,原酒の熟成はグラスゴーの集中熟成庫で行われているのがポイントです。
そしてこのオルトモア12年は,使用されている原酒の諸元については公表されていないものの,その味わいでは新鮮なミントや草原のようなフレッシュな香味や,香ばしい穀物クッキーの甘み,そしてオレンジジャムのような濃い柑橘感など,穏やかで心温まる風味の数々を楽しむことが出来ます。
香り
焼きリンゴの甘み,フローラルな蜂蜜感,ドライなナッツ感,穀物の甘み,バニラ
味わい
軽快な青リンゴ,濃い柑橘感,バニラ,ダークチョコ,紅茶感,甘いビスケット
▽
グレンエルギン12年
度数 | 43% |
容量 | 700ml |
種類 | シングルモルト |
ポイント
『グレンエルギン』は,スペイサイドのエルギン地区に所在する,グレンエルギン蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
蒸留所の所有者は業界最大手企業のディアジオ社であり,グレンエルギンの原酒は,日本国内で絶大な人気を誇る同社のブレンデッドウイスキー「ホワイトホース」のキーモルトに採用されていることが広く知られています。そのウイスキー作りでは,ブレンド需要を満たす大量の原酒を作るために,多くの設備の近代化が図られている一方,蒸留時に蒸気の冷却を行うコンデンサーに関しては伝統的なワームタブ式を残しており,これがグレンエルギンの深く豊かな香味に影響していると考えられています。
そしてこのグレンエルギン12年は,国内で流通している同蒸留所の唯一のオフィシャルボトルであり,シンプルなボトルデザインと堂々たる佇まいが印象的な一本。その味わいについては,多彩なフルーツや蜂蜜のような甘みを有していることから「ボトルに入ったフルーツケーキ」とも呼ばれるほどの華やかさを特徴としており,バランスが良くて誰でも美味しく飲めるデザート的なボトルになります。
香り
ハーブ,青々とした草原,甘い青リンゴ,アーモンド,蜂蜜,フレッシュな柑橘感
味わい
ドライな草原感,軽快なハーブ,柑橘類,香ばしくナッティ,トロピカル,蜂蜜感
▽
グレンアラヒー12年
度数 | 46% |
容量 | 700ml |
種類 | シングルモルト |
ポイント
『グレンアラヒー』は,スコットランドのスペイサイド地方に所在する,グレンアラヒー蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
同蒸留所の建物は,かつてマクダフやタリバーディンの設計も手がけてきたデルメ・エヴァンス氏によって設計されているのが特徴で,各種生産設備に関しては,工程の流れごとに自然流化が可能な高低差を設けることによって,エネルギー的な無駄が少ないのがポイント。また作られるウイスキーについては,基本的にノンピートタイプの華やかなテイストを特徴としており,長らくブレンデッド用原酒メインの体制となっていましたが,2017年に蒸留所の所有者が変更されてからは,シェリー樽原酒をふんだんに使用したシングルモルトリリースを展開したことで,一躍人気のモルトとなりました。
そしてこのグレンアラヒー12年は,同蒸留所のラインナップの中ではミドルグレード的なボトルであり,PXシェリー樽,オロロソシェリー樽原酒をメインに,ヴァージンオーク樽原酒や赤ワイン樽原酒をヴァッティングして作られている逸品。その味わいでは,同系統のウイスキーの中でも飛び抜けて強いドライフルーツの甘みや,ヘザーハニーの自然な甘み,そしてダークチョコレートのような深い甘みなど,シェリー樽熟成ウイスキーの美味しいところが凝縮されたテイストを楽しむことができます。
香り
濃密なドライフルーツ,黒糖,ウッディ,コーヒー,レーズン,バニラ,焼き菓子
味わい
圧巻のドライフルーツ,濃いカスタード,ダークチョコ,タンニン&スパイシー
▽
リンクウッド12年 花と動物
度数 | 43% |
容量 | 700ml |
種類 | シングルモルト |
ポイント
『リンクウッド』は,スコットランドのスペイサイド地方に所在する,ディアジオ社傘下のリンクウッド蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
同蒸留所は1821年に創業された蒸留所であり,かつてDCL社(ディアジオの前身)傘下の時代には,マネージャーのロデリック・マッケンジー氏がウイスキーの味を均一化するために,蜘蛛の巣を払うことすら禁じたという逸話があります。しかし1971年には大規模な改修工事が行われており,2013年までは新旧2棟の建屋で生産が行われていましたが,現在は歴史ある旧棟は取り壊されて新棟のみが使用されています。
そしてこのリンクウッド12年は,ディアジオ社の花と動物シリーズからリリースされた同蒸留所唯一のオフィシャルシングルモルトであり,バーボン樽とシェリー樽原酒のブレンドによって作られている逸品。その味わいでは,軽快なドライフルーツ香とともに漂う柔和なサルファリー感や,ホワイトチョコのようなフローラルな甘み,そしてオレンジとミントのような爽快感など,非常に本格的かつ美しいとしか形容できない華やかな風味を楽しむことができます。
香り
華やかなオレンジ,クリーミー,蜂蜜感,麦芽の甘み,蜂蜜感,ややサルファリー
味わい
強力なドライフルーツ,バニラ,柑橘感,ホワイトチョコ,土ピート,花畑と蜂蜜
▽
ザ・マッカラン12年 シェリーオーク
度数 | 40% |
容量 | 700ml |
種類 | シングルモルト |
ポイント
『ザ・マッカラン』は,1824年からスペイサイド地方で稼働を続け,現在はエドリントン社によって運営されているザ・マッカラン蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
同蒸留所のウイスキー作りでは,原料から各種製造工程までの随所に熱く伝統的な職人魂が凝らされており,生産されるウイスキーは,その上質すぎる味わいから「シングルモルトのロールスロイス」という異名がつけられるに至っています。具体的な製法の特色としては,大麦や酵母は須く華やかな香味を呈する高品質なもののみを採用し,スコットランド最小級の小型ポットスチルで丁寧に蒸留を実施。そして熟成工程では,マッカラン最大の特徴とも言えるシェリー樽の製造に関して,木材の選定からシーズニング等を含めた成形におよそ6年もの歳月をかけるなど,桁違いのこだわりっぷりがあります。
そしてこのマッカラン12年・シェリーオークは,蒸留所を代表する最もスタンダードなボトルであり,全期間を最高品質のシェリー樽で過ごした貴重な原酒のみによって構成されている逸品。その味わいでは,シングルモルトのロールスロイスという異名に相応しい,エレガントに煌めく宝石のようなドライフルーツ感や,力強くスパイシーなウッディ感など,圧倒的な存在感を楽しむことができます。
香り
砂糖漬けフルーツ,強くウッディな苦味,バニラアイス,ジンジャー,カラメル感
味わい
ドライフルーツ,ウッディ,フローラル,ビターキャラメル,ジンジャー,木の煙
▽
ザ・グレンリベット12年
度数 | 40% |
容量 | 700ml |
種類 | シングルモルト |
ポイント
『ザ・グレンリベット』は,スコットランドのスペイサイド地方に所在する,ペルノリカール社傘下のザ・グレンリベット蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
同蒸留所は,1800年前後のスコットランドでウイスキーの密造が蔓延っていた時代において,1824年に初めて英国政府の公認を獲得した,非常に有意な歴史を持つ由緒正しき蒸留所です。そしてその当時にしては異質であった,ノンピート麦芽を使用した王道のスペイサイドスタイルを築き上げ,創業から現在までの約200年に渡り,世界中から愛される華やかなウイスキーを作り続けている大人気のブランドです。
そしてこのザ・グレンリベット12年は,同蒸留所を代表する最もスタンダードなラインナップであり,アメリカンオークとヨーロピアンオークの2種類の樽で熟成された原酒が使用されている逸品。その味わいでは,明るく軽快なトロピカルフルーツの要素や,なめらかなバニラの甘み,そして香ばしいナッツ感など,万人に好まれる印象的な華やかさを楽しむことができます。
香り
トロピカルフルーツ,バニラ,甘い蜂蜜,香ばしいナッツ,ウッディな深み,柑橘
味わい
オレンジピール,トロピカルフルーツ,バニラ,ウッディ,ナッツ,甘いチョコ
▽
グレンフィディック12年
度数 | 40% |
容量 | 700ml |
種類 | シングルモルト |
ポイント
『グレンフィディック』は,スコットランドのスペイサイド地方に所在する,ウィリアム・グラント&サンズ社傘下のグレンフィディック蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
グレンフィディックは世界で一番売れているシングルモルトとしても広く知られていますが,その背景には1960年ごろのブレンデッドウイスキー全盛の時代において,敢えてシングルモルトとしてのブランドに力を入れ続けた結果,現在にかけて世間から高い評価を獲得するに至ったという史実があります。そんな同蒸留所のウイスキー作りは,主にノンピート麦芽を原料としつつ,複数の蒸留棟が常時稼働する大規模なものとなっており,その年間生産量は年間1,000万リットルを軽く超えるという驚きの水準。”世界180カ国で年間約1800万本以上が飲まれる”という絶大な需要を十分に満たすことを可能としています。
そしてこのグレンフィディック12年に使用される原酒については,上質なアメリカンオーク樽及びヨーロピアンオークのシェリー樽で最低12年以上熟成された原酒を中心としつつ,中にはさらなるフィニッシュを施したこだわりの原酒も使用されているのがポイント。その味わいでは,洋梨や青リンゴを思わせるとても分かりやすいフルーティ感や,バニラや蜂蜜のようなすっきりとした甘みなど,とにかく飲みやすくて万人受けするであろう風味を感じることができます。
香り
洋梨と青リンゴ,フレッシュなレモン,森林感,甘い木香,フローラルな蜂蜜
味わい
洋梨と青リンゴ,フローラルな蜂蜜,香ばしい樽感,森林の爽快感,柑橘感