記事の概要
世界5大ウイスキーのひとつであるアメリカンウイスキー。
ジムビームやメーカーズマークなどが作るバーボンウイスキーや,ジャックダニエルを筆頭としたテネシーウイスキーなどは,既に市場に定着しており,飲んだことのある人も多いものと思います。
しかしながら米国で独自に定義される『ライウイスキー』については,数もそこまで多くなく,店頭で見かける機会がやや限られていることから,未だに手を出したことのない人もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこでこの記事ではそんなニッチなライウイスキーに着目し,とても美味しい10本のボトルをご紹介していきます。
\\執筆者情報//
初谷(はつがい)
ウイスキーに関わるあらゆる情報をまとめ,「ウイスキーを知りながらより深く楽しめる記事」を発信しています。
【Shop】ウイスキー専門店『Drinkable books』
【経歴】東京都立大卒|元公務員・ネット酒屋開業
【資格】JWRC公認ウイスキーエキスパート|ウイスキー検定2級
【その他】バンド「Candid moment」のドラマー
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アメリカンウイスキーの定義
まずは本題に入る前にアメリカンウイスキーの定義について,今一度整理してみましょう。
アメリカンウイスキーは『連邦アルコール法』によって,その定義が定められており,代表的な”バーボンウイスキー”を初めとして複数の種類が設けられています。
具体的な区分は次の通りになります。
バーボンウイスキー
- 原料の51%以上がとうもろこし
- アルコール度数80%以下で蒸留
- 内側を焦がしたオークの新樽で熟成
- バレルエントリーは62.5%以下とする
- 2年以上の熟成でストレートバーボンウイスキーを名乗れる
ライウイスキー
- 原料の51%以上がライ麦
- 2年熟成以上でストレートライウイスキーと名乗れる
- その他はバーボンに同じ
美味しいライウイスキー10選
『ライウイスキー』は,禁酒法時代に多くのブランドが淘汰されてしまいましたが,現在まで残るもの,もしくは復刻したものは深い歴史的ルーツを持っている場合が多いように感じます。
そのため伝統的なアメリカンスピリッツを学ぶ教材としても非常に優れていると考えられますので,歴史的な背景も調べつつ,深く楽しんでいただきたいジャンルです。
今回はおすすめな美味しい10本のライスキーについて,ブランドの概要とともに魅力をまとめてみましたので,ぜひ参考としてください…!
エズラ・ブルックス
ストレートライウイスキー
種別 | ストレートライウイスキー |
度数 | 45% |
容量 | 750ml |
ポイント
『エズラブルックス』は1950年代,ケンタッキー州のローレンスバーグに所在していたホフマン蒸留所が創設したブランドであり,のちにその生産はメドレー蒸留所,そして現在はラクスコ社に引き継がれています。
このエズラ・ブルックスというブランド名称は,ケンタッキーウイスキーのパイオニアとも言われる”エズラ・ブルックス氏”という人物の名前から採られています。
このボトルはライ麦を主原料に採用し,内側を焦がしたオークの新樽にて,2年以上の熟成を経て作られるれっきとしたストレートライウイスキー。バニラ感とスパイシー感をベースに,チョコレートを思わせるウッディなビターさが魅力的な味わいとなっています。
香り
ビターチョコレート|エステリー|バニラ|ウッディネス|スパイシーな穀物感
味わい
ビターチョコレート|レザー感|バニラ|ライ麦のスパイシー感|甘いオーク香
余韻
オークのビター感|バニラ|スパイシー
▽
オールドオーバーホルト4年
種別 | ストレートライウイスキー |
度数 | 43% |
容量 | 750ml |
ポイント
「オールドオーバーホルト」はライウイスキーの代名詞的ブランドのひとつであり,1987年以降現在にかけてはウイスキーの生産をケンタッキー州のジムビーム蒸留所が手掛けています。
その代表作でもあるオールドオーバーホルト4年は,ライ麦の使用率は全体の59%,そして4年熟成を経ているということで,れっきとしたストレートライウイスキーになります。
味わいにおいては,ライウイスキーらしいスパイシー感や,アメリカンウイスキーらしいエステリー感を軸に,紅茶のマフィンのような独特な甘みが映える中程度の個性が魅力的。カクテルベースとしても広く用いられるライウイスキー界の有名銘柄です。
香り
ドライな穀物感|ほのかな溶剤香|スパイシー|枯れかけの草原|焼いた木|バニラ
味わい
ドライかつスパイシーな穀物|紅茶の茶葉|溶剤|焼いた木|紅茶マフィン
余韻
ブラックコーヒーの苦味|控えめなバニラと溶剤
▽
コーヴァル シングルバレル
ライウイスキー
種別 | ライウイスキー |
度数 | 40% |
容量 | 750ml |
ポイント
『コーヴァル』はアメリカの禁酒法時代の終焉以降,2008年に初めてシカゴで設立されたブランドになります。
創業者のバーネカー夫妻は名門大学を卒業していますが,アメリカ国内の誰もが憧れるような経歴を手放し,二人で働くためにシカゴでコーヴァル蒸留所を創業しました。
アメリカで最も水質が良いとも言われるミシガン湖の水を仕込水に採用し,原料・糖化酵素・酵母・樽材に至るまで,国内のオーガニック規格を満たしたものを使用する,深いこだわりが見られます。
中でもこのシングルバレル・ライは,原料の100%をライ麦とした原酒をシングルバレルでボトリングする珍しい構成。
材料由来のスパイシーさ,そしてメープルやキャンディコーンの甘さが表現された味わいは,ザ・ウォールストリートジャーナル誌でも大絶賛を受けています。
香り
フレッシュなメープル|甘いコーン|エステリー|さっぱりスパイシー|ドライな穀物
味わい
メープルシロップ|りんご|バニラ|あったまるココア|オイリーな穀物|スパイシー
余韻
ほのかなスパイシー感|りんごとはちみつ
▽
ジムビーム ライ
種別 | ライウイスキー |
度数 | 40% |
容量 | 700ml |
ポイント
『ジムビーム』は,世界120カ国以上に渡って幅広い人気を誇る,言わずと知れた超有名なアメリカンウイスキーのブランドになります。
現在は日本のサントリー社がブランドを所有しているため,日本国内でも広く浸透しており,スーパーはおろかコンビニでも見かけることがあるでしょう。
中でも今回取り上げるジムビーム・ライは,禁酒法以前の伝統的なライウイスキーのスタイルを踏襲した逸品。
1945年から続くジムビームのライウイスキーは,バニラ・オーク・スパイシーなどのライウイスキーらしい風味をしっかりと持った,お手本的な味わいが魅力です。
香り
ハーバルな茶葉感|バニラの甘み|エステリー|スパイシー|木の香り
味わい
ドライな穀物|エステリー|バニラ|ウッディビター|黒胡椒スパイシー|茶葉
余韻
茶葉感|エステリー|スパイシー
▽
ダッズハット ライ
種別 | ライウイスキー |
度数 | 45% |
容量 | 700ml |
ポイント
『ダッズハット(Dad's Hat)』は,アメリカのペンシルベニア州にある蒸留所で作られる”ライウイスキー”のブランドになります。
その生産においては,200年以上の歴史を持つアメリカンスピリッツの伝統を重んじ,古典的な”ペンシルベニア・ライ・ウイスキー”を作ることが,主題に掲げられています。
最たる特徴は”ライ麦80%・麦芽20%”というマッシュビルであり,それらの穀物は全て地元の農場から仕入れたもの。
そこから生み出されるウイスキーの味わいは,ライウイスキーの魅力でもあるスパイシーさをメインに,滑らかでバランスが良く,古典的ながらも馴染みの良いテイストとなっています。
香り
フローラルな花畑|ライ麦スパイシー|シナモン|ウッディ|バニラとエステリー
味わい
花|穀物|胡椒とシナモンスパイス|ドライフルーツ|ウッドスモーク|バニラ
余韻
フローラル&フルーティ|ライ麦スパイシー
▽
ノブクリーク ライ
種別 | ストレートライウイスキー |
度数 | 50% |
容量 | 750ml |
ポイント
『ノブクリーク』は,代表的なバーボンウイスキーメーカーである”ジムビーム蒸留所”が手がける,プレミアムなアメリカンウイスキーのブランドになります。
ブランドの創設は,ブッカーズでも有名な6代目マスターディスティラーのブッカー・ノー氏によるものであり,禁酒法以前の昔ながらのウイスキーが主題に据えられています。
その最大の特徴は”ボトルド・イン・ボンド法”と呼ばれる古典的な製法にあり,1年のうちワンシーズンに蒸留されたもののみを樽詰めし,4年間の熟成を適用。そしてアルコール度数50%以上でボトリングがなされています。
ノブクリーク・ライの味わいは,ブランドの特徴でもある力強い木とバニラの香味や,草原を想起させるハーバルな要素,そしてダイレクトなライ麦のスパイシー感が魅力となっています。
香り
トゲトゲしいライ麦スパイシー|強いウッディネス|バニラ|枯れ草原
味わい
ライ麦スパイシー|草原ハーバル|ウッディビター|エステリー|バニラ
余韻
ほのかな穀物の甘み|ダークチョコレート
▽
ブレット ライ
種別 | ストレートライウイスキー |
度数 | 45% |
容量 | 700ml |
ポイント
『ブレット』は,ウイスキー業界大手のディアジオ社の傘下である,ケンタッキー州のブレット蒸留所が生産するアメリカンウイスキーのブランドになります。
元々は1800年代に生み出されたブランドでしたが,1860年に創業者のブレット氏が事故死したことによって一度幕を閉じ,1987年に子孫のトムブレット氏が復刻させた経緯があります。
このブレット・ライは,高品質なライ麦を95%も使用し,4〜7年程度の熟成を経た原酒によって構成されている,れっきとしたストレートライウイスキー。
その味わいにおいては,ドライ&スパイシーで辛口ながらも,マイルドなバニラの甘みがジンワリと広がるような,個性的な風味が表現されています。
香り
力強いライ麦スパイシー|ほのかなバニラ香|ウッディ|枯れ草
味わい
ドライな穀物|ライ麦スパイシー|僅かにバニラ|フレッシュ柑橘|枯れ草
余韻
ドライ|スパイシー|枯れ草
▽
ホイッスルピッグ10年
種別 | ライウイスキー (カナダ産原酒を使用) |
度数 | 50% |
容量 | 700ml |
ポイント
『ホイッスルピッグ』は,アメリカのバーモント州に所在する”ホイッスルピッグ蒸留所”が手がけるライウイスキーのブランドになります。
ブランドの創設は2007年,今は亡きマスターディスティラーのデイヴ・ピッカレル氏を筆頭としたチームによるもの。
その信念は「ライウイスキー」の良いところを大切に守り,無駄なものは排除。そしてより素晴らしいウイスキーのために革新を続けるというものであり,最新技術を活用したライウイスキー作りが展開されています。
このホイッスルピッグ10年は,ブランドが見つけ出したカナダ産のライウイスキーを独自のブレンド技術で仕上げた逸品。
ライウイスキーらしいスパイシーさや,オレンジ,キャラメルなどの濃厚な甘さは,全米ワイン専門誌”ワインエンスージアスト”にて96点を獲得するほどの実力派です。
香り
強い溶剤感|濃いオレンジ|バニラアイス|キャラメル|ウッディ|葉っぱを燃やした煙|スパイシー
味わい
強い溶剤感|スパイシーな穀物感|ビターな茶葉感|マフィン|オレンジ|バニラ|ハーバル
余韻
どことないコーヒー感|胡椒スパイス|茶葉系のフローラル
▽
ミクターズ ライ
種別 | ライウイスキー |
度数 | 42.4% |
容量 | 700ml |
ポイント
『ミクターズ』は,ケンタッキー州のルイヴィルに建つミクターズ蒸留所で生産される,プレミアムなアメリカンウイスキーのブランドになります。
その歴史的ルーツはアメリカ独立戦争以前の1753年にまで遡ることができ,当時はアメリカ最古の公認蒸留所であるボンバーガー蒸留所が生産を行っていました。
しかしこの蒸留所は1990年に閉鎖されており,しばらくは他の蒸留所の生産を委託し,2013年に新たに現在のミクターズ蒸留所が建てられています。
そのウイスキーの生産においては,樽詰めを51.5%(通常62.5%)という低めの度数で行い,熟成をよりを早く深く執行させるべく,倉庫の温度を上下させるという”コスト度外視”な戦術を執っているのが特徴。
中でもこのミクターズ・ライは,高品質なライ麦を主原料とした原酒を一つの樽からボトリング。甘さとスパイシーさのバランスが卓越したプレミアムな風味を感じることができます。
香り
ライ麦と胡椒のスパイシー感|コゲウッディ|りんごとナシ|溶剤|オレンジwithキャラメル
味わい
マイルドなスパイシー|オレンジの酸味|コゲウッディ|エステリー|バニラキャラメル|胡椒
余韻
ほのかな果実香|スパイシー|エステリー
▽
ワイルドターキー ライ
種別 | ストレートライウイスキー |
度数 | 40.5% |
容量 | 700ml |
ポイント
『ワイルドターキー』は,ケンタッキー州のローレンスバーグ郊外に建つワイルドターキー蒸留所が手がける,アメリカンウイスキーのブランドになります。
ブランドの歴史は1869年,D.L.リピー蒸留所が創設したところまで遡ることができますが,複数の所有者・生産者の変更を経て,現在はカンパリ社が監修しています。
ワイルドターキー・ライは,原材料の51%以上に高品質なライ麦とし,4〜5年の熟成を経た原酒によって構成されていることから,定義上もストレートライウイスキーを名乗ることができる逸品。
カクテルベースによく用いられるライウイスキーとして最適な風味をしっかりと持っており,スパイシー・エステリー・クリーミーのバランスが整合した完成度の高さが売りです。
香り
エステリー|柑橘の酸味|麦っぽい甘み|ライらしいスパイシー|胡椒|バニラ
味わい
キレキレスパイシー|発酵っぽい酸味|エステリー|穀物の苦味|ウッディ|バニラキャラメル
余韻
胡椒系スパイシー|エステリー|酸味と苦味
最後までお読み頂きありがとうございました!
記事の感想・並びにご意見ご要望等ありましたら是非ともコメント頂けましたら幸いです。
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