記事の概要
管理人によるボトルのレビューを通して、皆様にその魅力を伝える記事です。
今回は…
「リンドーズ PXシェリー Y'sカスク」
当記事では,このボトルについて
などなど詳しく解説していきます!!
\\執筆者情報//
初谷(はつがい)
ウイスキーに関わるあらゆる情報をまとめ,「ウイスキーを知りながらより深く楽しめる記事」を発信しています。
【Shop】ウイスキー専門店『Drinkable books』
【経歴】東京都立大卒|元公務員・ネット酒屋開業
【資格】JWRC公認ウイスキーエキスパート|ウイスキー検定2級
【その他】バンド「Candid moment」のドラマー
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「リンドーズ」ってなに?
リンドーズの解説
- Y'sカスクとは?
『Y'sカスク』は主に洋酒のインポーターとして知られる株式会社都光が手がけるオリジナルブランドであり,同社が独自に買い付けを行い,商品化させているのが特徴です。
今回紹介する『リンドーズ PXシェリー』も,このY'sカスクからリリースされた限定商品であり,総数671本限定の貴重なボトルになります。
- ブランドと蒸留所
『リンドーズ』はスコットランドのローランド地方に所在する”リンドーズアビー蒸留所”が手がけるオフィシャルシングルモルトウイスキーのブランドになります。
蒸留所最大の特徴は,スコッチウイスキーに関連する最古の記録に登場する「修道士ジョン・コー」が滞在していたとされるリンドーズ修道院,その跡地の真横に建てられている点にあります。
修道院は今でこそ修道院は解体された状態ですが,考古学的に価値のある遺跡や当時の陶器,配管などが多く見つかっており,蒸留所の建設時にもそれらの一部が見つかったことで大きな話題となっていました。
そのウイスキーの製造においても,かつてウイスキーが”アクアヴィテ”と呼ばれていた時代と同じ場所で生産が行われるというのは非常に大きな意味を含んでおり,さながら起源の復活と言っても差し支えないでしょう。
- ウイスキー製造の特徴
リンドーズアビー蒸留所では,創業時にウイスキー業界のサンダーバードとも呼ばれたカリスマ”ジム・スワン博士”の助力を得ており,彼の知見が活かされたこだわりの製造工程が導入されています。
各種原料については,地元産の大麦を地元のモルトスターから仕入れ,仕込み水は敷地内の井戸水から取水。
そして酵母はアンカー社製のものを中心に使用していますが,ローランド地方のヘリオットワット大学と連携した実験的な酵母も使用するなど,地域に根差した生産にチャレンジしているのがこだわりのポイントになります。
その他の製造工程においては,フルーティかつ複雑な香味を多く得る工夫が為されており,例えば発酵時間は乳酸発酵の効果を得るために100時間程度と長めに設定されています。
またポットスチルは大きめの初留器1基に対して小さめの再留器2基という珍しい体制であり,内容物が接する銅の表面積を多く確保することで,軽くすっきりとした酒質を得ています。
そして熟成に使用する樽についても,ジム・スワン博士の伝手が大いに活かされており,高品質なバーボン樽やシェリー樽の他,独自のSTR樽(※)が採用されていることから,多彩かつ魅力的な風味を原酒に付与することができます。
※STR樽→赤ワイン樽の再利用手法のひとつ。
S:シェービング(タルの内側を削り,雑味の原因を減らす)
T:トースティング(表面を焼いてバニラ香やフルーツ香を引き出す)
R:リチャーリング(最後に強火で表面を焦がし,ビターな甘みを引き出す)
「リンドーズ PXシェリー」ボトルの特徴
\\ボトル外観//
\\ボトル諸元//
ボトル名 | リンドーズ シングルモルト2019 PXシェリーカスク Y'sカスク |
地域 | スコットランド,ローランド |
種類 | シングルモルト |
原料 | モルト |
容量 | 700ml |
度数 | 59% |
飲んだ場所 | リカマン店頭試飲 |
\\製法と特徴//
- 2019年6月6日樽詰め,2022年11月7日ボトリング
▶︎3年程度の熟成期間だが,緯度が低めのローランド地方の気候によって熟成がダイナミックに進行している - ペドロヒメネスシェリーカスクで熟成
▶︎世界一の糖度を誇ると言われる酒精強化ワインの樽で熟成を行うことにより,ベリーやブドウの濃厚な甘みや,ワインらしさが原酒に付与されている
「リンドーズ PXシェリー」テイスティングレビュー
さてさて、それでは早速「リンドーズ PXシェリー」をテイスティングレビューしていきます!
色味
『リンドーズ PXシェリー』の色味については,明らかに濃く見え,琥珀色を通り越して焦茶色と言っても過言ではないように感じます。
客観的な指標としてwhiskys.co.ukの色見本に準えて評価すると,”Treacle”くらいであると言えるでしょう。
▼
香り
- 第一印象
樽由来の強い渋み,濃いレーズン風味,葡萄の酸味
高い度数の通りにやや刺激を感じる
- 経時変化で見える要素
ワイン感がかなり強い,酸味を伴うベリー系のフルーツ,シナモンスパイス
筆者の一言
香りはPXシェリー樽由来の香味が支配的に強く,ワインっぽい渋みと甘みがとにかく強力。
PXシェリー樽熟成ウイスキーが好きな方にとっては,その界隈に尖り尽くした最高のチョイスになりそうですね…!
▼
味わい
- 第一印象
ワインの甘みと酸味,タンニンの渋み,ラズベリー感
明らかにワインっぽい酒臭さが強く感じられる
- 経時変化で見える要素
胡椒とシナモン,濃密なレーズン,焦げた木のビター感,ナッティ
- 余韻に残る要素
ダークチョコやコーヒーの苦味,胡椒のピリリ感
筆者の一言
味わいも香りの印象と相違なく,ワインっぽい甘み・酸味・渋みがかなり強く出ている印象。
甘みやウッディ感も出ているが,やはり否めない若さとワイン感がかなり支配的。
個性を極めすぎているが故に,好みがはっきりと分かれそうですが,非常に興味深い味わいでした!
「リンドーズ PXシェリー」総評
最後に総評に入りたいと思います!まずはレーダーチャートから!
さてさて、気になる点数は…
点数の理由と評価
- 香り:3/5|味わい:2/5
『リンドーズ PXシェリー』の香りと味わいについては,PXシェリー樽由来の風味が支配的であった印象が強く,その方向にかなり尖り切った個性を持っているように感じられました。
そのため好みがかなりハッキリと分かれてくると考えられ,一概な評価をするのが非常に難しかったですが,あくまで個人的な主観としては,3年熟成の若いウイスキーということもあり,香りにおいては若さと美味しさが拮抗していたので中程度の評価。
味わいにおいてはやや若さが勝り,ワイン由来の酒臭さのようなものが割と強く感じられてしまったので,少し低評価というところでまとめました。
シェリー樽やワイン樽熟成のウイスキーが好きな方は,是非一度試していただきたいと強く思いました。
- 初心者向け度:1/5
続いて初心者向けかどうかという観点で『リンドーズ PXシェリー』を見ると,全く適していないということができるでしょう。
というのも,かなり樽の個性に振り切ったテイストを持つウイスキーであったため,このボトルで一般的なウイスキーらしさを感じることは難しいと考えられます。
間違いなく好き嫌いの分かれてくるテイストとなっていますので,初心者の段階でこのボトルを飲むことで得られるポジティブな影響は,ほとんど無いように思えてしまいました。
よってまずはこのボトルに辿り着く前に,マッカランやドロナック,ファークラスなどのシェリー樽に強い蒸留所のオフィシャルボトルを試していただき,更なる個性を欲した時に飲むと『リンドーズ PXシェリー』を最高に楽しめるでしょう。
- 入手性:1/5|コスパ:3/5
最後に『リンドーズ PXシェリー』のコスパと入手性については,入手性はかなり良くない,コスパは良いとも悪いとも言い難いと言ったところでしょうか。
というのもこのボトルの生産量は671本限定であり,ボトリングも2022年11月のため,執筆日時点で市場に残っているボトルがあまり多くないと考えられます。
通販等での流通も確認できないので,リンドーズ並びにY'sカスクを手がける都光と同じグループであるリカーマウンテンの店頭で発見出来れば,やっと購入の機会が巡ってくると言った感じでしょう。
コスパについては,3年熟成で税込1万円強程度というところを見れば,かなり割高に感じられてしまいます。
しかしながら尖ったPXシェリー特化型のテイストを求めている人に対しては,深く刺さるプロパティを持っているため,ピンポイントの需給バランスを考慮すればギリ納得のいく価格帯かと思います。
※既に売り切れですが,リカマンの商品ページはこちら。参考までに!
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レビューに使用した道具たち
グラス:グレンケアン
ジガーカップ:JOYONEというメーカーのものをAmazonで購入して使っています。
正直計りたい分量が計れるものであれば何でもいいと思います!