記事の概要
管理人によるボトルのレビューを通して、皆様にその魅力を伝える記事です。
今回は…
「リンドーズ シングルモルト MCDXCIV」
当記事では,このボトルについて
などなど詳しく解説していきます!!
\\執筆者情報//
初谷(はつがい)
ウイスキーに関わるあらゆる情報をまとめ,「ウイスキーを知りながらより深く楽しめる記事」を発信しています。
【Shop】ウイスキー専門店『Drinkable books』
【経歴】東京都立大卒|元公務員・ネット酒屋開業
【資格】JWRC公認ウイスキーエキスパート|ウイスキー検定2級
【その他】バンド「Candid moment」のドラマー
各種SNSも運用中!
「リンドーズ」ってなに?
リンドーズの解説
- ブランドと蒸留所
『リンドーズ』はスコットランドのローランド地方に所在する”リンドーズアビー蒸留所”が手がけるオフィシャルシングルモルトウイスキーのブランドになります。
蒸留所最大の特徴は,スコッチウイスキーに関連する最古の記録に登場する「修道士ジョン・コー」が滞在していたとされるリンドーズ修道院,その跡地の真横に建てられている点にあります。
修道院は今でこそ修道院は解体された状態ですが,考古学的に価値のある遺跡や当時の陶器,配管などが多く見つかっており,蒸留所の建設時にもそれらの一部が見つかったことで大きな話題となっていました。
そのウイスキーの製造においても,かつてウイスキーが”アクアヴィテ”と呼ばれていた時代と同じ場所で生産が行われるというのは非常に大きな意味を含んでおり,さながら起源の復活と言っても差し支えないでしょう。
- ウイスキー製造の特徴
リンドーズアビー蒸留所では,創業時にウイスキー業界のサンダーバードとも呼ばれたカリスマ”ジム・スワン博士”の助力を得ており,彼の知見が活かされたこだわりの製造工程が導入されています。
各種原料については,地元産の大麦を地元のモルトスターから仕入れ,仕込み水は敷地内の井戸水から取水。
そして酵母はアンカー社製のものを中心に使用していますが,ローランド地方のヘリオットワット大学と連携した実験的な酵母も使用するなど,地域に根差した生産にチャレンジしているのがこだわりのポイントになります。
その他の製造工程においては,フルーティかつ複雑な香味を多く得る工夫が為されており,例えば発酵時間は乳酸発酵の効果を得るために100時間程度と長めに設定されています。
またポットスチルは大きめの初留器1基に対して小さめの再留器2基という珍しい体制であり,内容物が接する銅の表面積を多く確保することで,軽くすっきりとした酒質を得ています。
そして熟成に使用する樽についても,ジム・スワン博士の伝手が大いに活かされており,高品質なバーボン樽やシェリー樽の他,独自のSTR樽(※)が採用されていることから,多彩かつ魅力的な風味を原酒に付与することができます。
※STR樽→赤ワイン樽の再利用手法のひとつ。
S:シェービング(タルの内側を削り,雑味の原因を減らす)
T:トースティング(表面を焼いてバニラ香やフルーツ香を引き出す)
R:リチャーリング(最後に強火で表面を焦がし,ビターな甘みを引き出す)
「リンドーズ MCDXCIV」ボトルの特徴
\\ボトル外観//
\\ボトル諸元//
ボトル名 | リンドーズ MCDXCIV |
地域 | スコットランド,ローランド |
種類 | シングルモルトウイスキー |
原料 | モルト |
容量 | 700ml |
度数 | 46% |
受賞歴 | IWSC2022 ▶︎98点獲得 SWSC2022 ▶︎ダブルゴールド受賞 |
飲んだ場所 | リカマン店頭試飲 |
\\製法と特徴//
- 1stFillバーボン樽,1stFillシェリー樽,STR樽で熟成された原酒を使用
▶︎クリーミー・フルーティ・ビター&スイートなど,多彩な方向にテイストの魅力を伸ばし,満足度の高さとバランスの良さが両立されている - ジム・スワン博士の知見が活かされた製法
▶︎カバランやキルホーマンなど,多くの蒸留所を成功に導いた博士の手腕により,その美味しさには抜群の信頼感を持つことができる - 地元の原料を使用するように努力している
▶︎かつてアクアヴィテが作られた土地から得られる環境要因を最大限に確保することにより,歴史的に価値のある風味が生み出されている
「リンドーズ MCDXCIV」テイスティングレビュー
さてさて、それでは早速「リンドーズ MCDXCIV」をテイスティングレビューしていきます!
色味
『リンドーズ MCDXCIV』の色味については,比較的薄めであるように見え,鮮やかに輝くゴールドといったクリーンな印象です。
客観的な指標としてwhiskys.co.ukの色見本に準えて評価すると,”Yellow Gold”くらいであると言えるでしょう。
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香り
- 第一印象
オレンジの甘さ,タンニンの渋み,僅かにサルファリー
アルコール感はほとんどない
- 経時変化で見える要素
さらっとした蜂蜜,ザラついたテクスチャのモルティ感,僅かに潮の要素,木っぽい煙感
筆者の一言
香り全体としては非常に豊かな多様性を第一に感じました。
バーボン樽,シェリー樽,STR樽全てに通づる要素がしっかりと出ており,適度な個性としてうまくまとめられている印象。
決して分かりやすくは無いですが,旨味の詰まった魅力的なウイスキーですね!
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味わい
- 第一印象
木やタンニン系のビター感,潮を感じるモルティ感,ドライな土っぽさ
アルコール感はスパイシーと捉えられる程度で,あまりネガティブで無い
- 経時変化で見える要素
ダークチョコレート,柑橘と梨,ほのかにスモーキー,ジャムっぽいデフォルメされた果物の甘さ
- 余韻に残る要素
塩キャラメル感,サルファリーなドライフルーツ
筆者の一言
味わいは想像よりもかなり個性的であり,複雑さや奥深さに長けていた印象です。
甘さやフルーティさ等の分かりやすい要素よりかは,サルファリー感やどことない潮感が個性的な魅力を醸し出しているように感じられました。
香り同様分かりやすくはありませんが,リンドーズらしさをしっかり持った唯一の味わいでしたね!
「リンドーズ MCDXCIV」総評
最後に総評に入りたいと思います!まずはレーダーチャートから!
さてさて、気になる点数は…
点数の理由と評価
- 香り:4/5|味わい:4/5
『リンドーズ MCDXCIV』の香りと味わいについては,”分かりやすさ < 唯一の個性”と言った感じであり,原酒本来のテクスチャと樽由来の個性的な要素をダイレクトに感じることができました。
特にほのかな潮っぽさやシェリー樽系のサルファリー感,どことないスモーキーさが割と前面に出ており,全体としては飽きの来ない複雑な奥深さを持っていました。
もちろん背景には蜂蜜や果物の華やかな甘みも隠しもっているので,飲めば飲むほどクセになると言った表現が最もしっくりくるように思います…!
- 初心者向け度:2/5
続いて初心者向けかどうかという観点で『リンドーズ MCDXCIV』を見ると,決して向いているとは言えないでしょう。
というのも,分かりやすい美味しさが個性的なテイストの奥の方に隠されてしまっているため,初心者の段階ではコイツ本来の魅力をしっかりと感じることは難しいと考えられます。
よってメジャーな飲みやすいブランドから,アイラモルトのような強い個性を持つブランドまでを一通り嗜んだ上で,このボトルを試していただくと,その魅力を最大限に楽しむことができるでしょう。
- 入手性:3/5|コスパ:4/5
最後に『リンドーズ MCDXCIV』の入手性とコスパについては,現状どちらも悪くは無い,もしくはそこそこ良いと捉えることができるでしょう。
今でこそ通販などでは販売している様子を確認することができますが,国内の入荷数は3,000本とされているため,いずれは入手困難となってくる可能性が考えられます。
ここではその不透明性を鑑みて,入手性の評価は「3」とさせていただきました。
また現在の価格帯ベースでコスパを検討すると,こだわりを持って生産された46%のハイプルーフで個性的なウイスキーであること,そして申し分ないコンペティションの受賞歴を有することなどを見るに,非常にリーズナブルに感じてしまいますね。
是非バーで飲むなり,思い切って買ってしまうなり,今のうちにコイツの魅力を体感しておいて欲しいと思いました…!