記事の概要
世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。
今回はスコットランドより「グレンスコシア蒸留所」になります!
Points!「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」
キーワード
キャンベルタウンに残る数少ない蒸留所/マッカラム氏の幽霊
グレンスコシアの特徴
ブリニー(塩気)/バーボン樽由来のバニラ・カラメル/甘め/弱めのスモーキー
グレンスコシア蒸留所
グレンスコシア蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。
蒸留所の概要
創業年 | 1832年 |
所有会社 | ヒルハウス・キャピタルマネジメント社 |
地域分類 | スコットランド キャンベルタウン |
発酵槽 | ステンレス製9基 |
ポットスチル | 初留1基・再留1基 |
仕込み水 | クロスヒル湖 蒸留所の井戸水 |
ブレンド先 | スコシアロイヤルなど |
「グレンスコシア蒸留所」蒸留所の立地
ポイント
グレンスコシア蒸留所はスコットランドの南西、キンタイア半島先端部のキャンベルタウンに位置しています。
キャンベルタウンは小規模な町でしたが、かつては14箇所もの蒸留所が操業していたほどのウイスキーの名産地でした。
しかし、主要取引先であったアメリカで禁酒法が施行された頃から衰退してしまい、現在は3蒸留所を残すのみとなっています。
またキンタイア半島は良質な水・地元の大麦・ピートが得られ、かつ港としても栄えているため、ウイスキー作りに最適な土地になります。
「グレンスコシア蒸留所」蒸留所の歴史
グレンスコシア蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!!
西暦年 | 内容 |
---|---|
1795年 | キャンベルタウンで密造が横行しており、周辺地域含めて30箇所程度の蒸留器が稼働していた |
1832年 | グレンスコシア蒸留所がジェームズ・スチュワートとジョン・ガルブレイスによて設立される |
1919年 | 蒸留所がウェストハイランドモルトディスティラーズ社に売却される |
1924年 | ダンカン・マッカラムが蒸留所を買収する |
1930年 | アメリカ禁酒法などの悪影響が重なり、蒸留所が閉鎖を余儀なくされる 当時の所有者であったマッカラムが借金苦から自殺をしてしまう |
1933年 | 蒸留所がブロッホブラザーズに買収されたことで、生産が再開される |
1954年 | 蒸留所がカナダのハイラムウォーカー社に買収される |
1955年 | 蒸留所はGillies&Co distillers社に売却される |
1970年 | Gillies&Co distillers社がamalgamated distilled product社に合併される |
1984年 | 蒸留所が5年間閉鎖されてしまう |
1989年 | ギブソン社のもとで生産が再開される |
1994年 | 蒸留所がグレンカトリーン社に買収される |
1999年 | 蒸留所がロッホローモンドディスティラーズ社に買収される |
2005年 | グレンスコシア12年が発売される |
2012年 | オフィシャルボトルとして10年・12年・16年・18年・21年がリリースされる |
2019年 | 蒸留所のオーナーが中国のヒルハウス・キャピタルマネジメント社となる |
グレンスコシアに纏わるストーリー
マッカラム氏の自殺
1930年に当時蒸留所を所有していたマッカラム氏は、借金苦から自殺をしてしまいました。
彼が身を投げたのはキャンベルタウンロッホと呼ばれる入り江で、ここは民謡でも「入り江が全てウイスキーだったら」と歌われる地元民の憩いの地でした。
この日以来、蒸留所にはマッカラム氏の幽霊が出てくると話題になっていたらしいですね(泣)
裏を返せば化けて出るほどウイスキーを愛していた人だったということでしょうか、悲しくなってしまいます
「グレンスコシア蒸留所」製法の特徴
製麦について
ポイント
グレンスコシア蒸留所では原料のモルトを、スコットランド南西部の製麦業者であるグリーンコアモルティングから購入しています。
ピーティングレベルは基本的にはノンピートのものですが、年間で4週間程度はピーテッドタイプの19ppm・25ppmのモルトが仕込まれています。
モルトはモルトミルで粉砕し、グリストとしたのちに糖化へと進みます。
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糖化について
ポイント
グレンスコシア蒸留所には1バッチあたり2.8トンのグリストを糖化可能な、昔ながらの鋳鉄製マッシュタンが設置されています。
仕込み水は蒸留所の地下約24メートルから組み上げた井戸水及びクロスヒル湖の水を使用しています。
まずはマッシュタンにグリストを投入し、続いて仕込み水が8時間かけつつ、2回(1回目は66度、2回目は72度)に分けて注がれます。
こうして糖を豊富に含んだウォートを得て、発酵の工程へと進みます。
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発酵について
ポイント
グレンスコシア蒸留所にはステンレス製のウォッシュバックが9基あります。9基のうち6基は室内、3基は室外に設置されています。
糖化で得られたウォートを22度まで冷却したのち、これらのウォッシュバックに移したのちに酵母を添加して発酵が進められます。
発酵にかける時間は70時間以上と比較的長めであるため、より深い香りを得ることができます。
発酵が完了すると投入したウォートは、約8%のアルコールを含んだもろみへと変貌しており、もろみの完成をもって蒸留の工程へと進みます。
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蒸留について
ポイント
グレンスコシア蒸留所には容量16000リットルのウォッシュスチルが1基、容量12000リットルのスピリットスチルが1基設置されています。ポットスチルは2基とも背が低く、ネックが太めでずっしりとした形状となっており、重厚で複雑なアルコールが収集されます。
蒸留の回数はスコットランドで一般的な2回蒸留です。
初留は約9時間かけて行われており、アルコール度数約20%のローワインが得られます。
続く再留の際には不安定なアルコールをカットするためにミドルカットが行われます。
ミドルカットにおいては,まず蒸留初期のフォアショットがカットされ、その後は平均度数が69%となるようにハーツを確保し、抽出される溶液が度数約63%になるまで蒸留が続けられます。
次の工程は熟成になります!
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熟成について
ポイント
蒸留によって得られたニューポットは度数約69%と高めのため、樽熟成に適した63.5%となるまで加水してから樽詰めされます。
熟成には主にアメリカンオークのバーボン樽を使用しており、ラック式のウェアハウスに格納されます。一部シェリー樽などが使われることもあります。
ウェアハウスにはおよそ7500樽を収容することが可能です。
オフィシャルボトルの紹介
グレンスコシア蒸留所のオフィシャルボトルのうち主要なボトルを紹介していきます!
グレンスコシア10年
ポイント
グレンスコシア蒸留所のオフィシャルボトルのうち,最もスタンダードな10年熟成のボトルになります!
潮風を受ける環境下でファーストフィルのバーボン樽で熟成された原酒のみが採用されています。
バーボン樽原酒らしいバニラや柑橘のニュアンスと,キャンベルタウンらしいブリニーな要素がしっかりと感じられる素晴らしいボトルです!
ー特徴ー
価格帯
Amazon:6,490円(送料込み)
※2022年7月調べ
香り
ココナッツ/ミント/オレンジ系柑橘/マンゴー/ほのかにスパイシー/潮感
味わい
ココナッツ/バター/オレンジ/トロピカル/ブリニー/メンソール/コショウ系スパイシー
余韻
クリーミーでスパイシーな余韻がとても長く続く
グレンスコシア15年
ポイント
15年以上の熟成を経てボトリングされたグレンスコシアになります!
アメリカンオーク樽で熟成させた原酒をペドロヒメネスシェリー樽とファーストフィルのバーボン樽に詰め直し,追加で熟成された原酒がバランスよくバッティングされています。
グレンスコシアの公式ラインナップの中では,最もグレンスコシアのハウススタイルが表現されているボトルと言えるでしょう!
ー特徴ー
価格帯
Amazon:8,525円(送料込み)
※2022年7月調べ
香り
塩キャラメル/柑橘/トロピカル/シロップ/ソルティ/ビター
味わい
塩キャラメル/オレンジジャム/トロピカル/ブリニー/レーズン/モルティ
余韻
非常に香ばしい潮感がとても長く続く
グレンスコシア18年
ポイント
18年以上の長い期間の眠りから解き放たれた至高のグレンスコシアです!
リフィルバーボン樽とアメリカンオーク樽で熟成した原酒を一旦バッティング。その後ファーストフィルのオロロソシェリー樽で1年間追加熟成させたこだわりの原酒で構成されています。
グレンスコシアの特徴にオロロソシェリー樽由来の華やかなテイストが加わった完全無欠の1本。
ー特徴ー
価格帯
Amazon:16,900円(送料込み)
※2022年7月調べ
香り
オークの甘さ/パイナップル/バニラ/りんご/こげ系ピート/レーズン
味わい
ウッディ/モルティ/ドライフルーツ/バナナ/塩キャラメル/ビターとスパイス/ほのかなスモーキー
余韻
潮の香りとウッディ,そして優しいピートスモークが非常に長く続く
グレンスコシア
キャンベルタウンハーバー
ポイント
100%ファーストフィルのバーボン樽原酒で構成された,ノンエイジのグレンスコシアです!
最もリーズナブルにキャンベルタウンのおいしさを味わうことができるところが素晴らしい。
ー特徴ー
価格帯
Amazon:3,869円(送料込み)
※2022年7月調べ
香り
バニラ感/カラメル/ナッツ類/青りんごフルーティ/海の香り
味わい
甘い/バニラ/ブリニー(塩気)/若干スパイシー/ビター/スパイシー
余韻
濃厚で甘い余韻が続く
グレンスコシア
ダブルカスク
ポイント
名前の通りアメリカンオーク樽で熟成させた原酒を「ペドロヒメネスシェリー樽」と「ファーストフィルのバーボン樽」で後熟させたグレンスコシアです!
グレンスコシアの個性と2種類の樽の風味が綺麗に合わさり,複雑で深い味わいが錬成されています。
ー特徴ー
価格帯
Amazon:5,335円(送料込み)
※2022年7月調べ
香り
キャラメル/プリン/多様なフルーツ/トフィー/レーズン
味わい
塩キャラメル/バニラ/プリン/ドライフルーツ/ミント/香ばしいオーク/ブリニー
余韻
濃厚な甘さが非常に長く続く
参考資料
参考サイト:グレンスコシア公式 scotchwhisky.com whisky.com