記事の概要
管理人によるボトルのレビューを通して、皆様にその魅力を伝える記事です。
今回は…
「フェッターケアン12年」
当記事では,このボトルについて
などなど詳しく解説していきます!!
\\執筆者情報//
初谷(はつがい)
ウイスキーに関わるあらゆる情報をまとめ,「ウイスキーを知りながらより深く楽しめる記事」を発信しています。
【Shop】ウイスキー専門店『Drinkable books』
【経歴】東京都立大卒|元公務員・ネット酒屋開業
【資格】JWRC公認ウイスキーエキスパート|ウイスキー検定2級
【その他】バンド「Candid moment」のドラマー
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「フェッターケアン」ってなに?
フェッターケアンの解説
- 蒸留所の概要
『フェッターケアン蒸留所』はスコットランドの東ハイランドに建つ蒸留所であり,1824年にアレクサンダー・ラムゼイという人物によって創業されたことが知られています。また1830年から1923年までの間は,英国の政界からブレンデッド業界の発展に貢献したグラッドストン家によって所有されていた由緒正しき蒸留所でもあります。
そして現在の所有者は,ホワイト&マッカイを手がけているフィリピンのエンペラドール社となっており,このことからフェッターケアンはホワイト&マッカイのキーモルトにも抜擢されています。よって生産される原酒の多くはブレンド用に取りおかれてしまい,シングルモルトとしての流通は多くありませんが,現在は2018年に刷新されたクールなデザインのオフィシャルボトルが市場に見受けられます。
ちなみに『フェッターケアン』という名称は町名でもありますが,ゲール語で斜面を意味する”fetter”と,森を意味する”Cairn”から名付けられており,「斜面の上の森」という意味を持ってると考えられています。
- 製法上のこだわり
『フェッターケアン蒸留所』のウイスキー作りでは,ノンピート麦芽を主体としながら,一部にはピーテッド麦芽も活用しており,多様な性質の原酒を作り分けることが可能。またマッシュタンは,敢えて旧型のレイキ&プラウ式のものを使用しており,複雑な香味を呈する少々濁ったウォートを得ることができます。
ポットスチルは一般的なストレート型ですが,特にスピリッツスチルにおいては,ネックの外部を流水が伝う特殊なシステムを採用しています。これによって蒸気の環流を促進することができ,より軽やかな香味を持つアルコール蒸気が多く得られています。
そして所内には伝統的なダンネージスタイルのウェアハウスも併設されているため,およそ30,000樽程度は所内に安置することが可能。バーボン樽やシェリー樽を巧みに使い分け,ハイランドらしい多様なスタイルを表現することが可能です。
「フェッターケアン12年」ボトルの特徴
\\ボトル外観//
\\ボトル諸元//
ボトル名 | フェッターケアン12年 |
地域 | スコットランド,東ハイランド |
種類 | シングルモルト |
原料 | モルト |
容量 | 700ml |
度数 | 40% |
\\製法と特徴//
- 旧型マッシュタンで濁ったウォートを抽出
▶︎濁ったウォートでは,沈澱成分に由来した複雑かつ多様な香味が得られる - 48時間という短い発酵時間
▶︎短時間の発酵では乳酸発酵の影響があまり見られないため,フルーティさ等よりかは,香ばしいナッティ感やモルティ感などが強く出てくる - 米オーク製バーボン樽で12年以上の熟成を実施
▶︎バーボン樽熟成のウイスキーはバニラやハチミツ,柑橘フルーツのような風味を得ることができながら,原酒本来の個性も強く感じることが可能
「フェッターケアン12年」テイスティングレビュー
さてさて、それでは早速「フェッターケアン12年」をテイスティングレビューしていきます!
色味
『フェッターケアン12年』の色味については,琥珀みがかったハチミツ色のように見え,中程度か少し濃い程度に感じられます。
客観的な指標としてwhiskys.co.ukの色見本に準えて評価すると,"Chestnutploroso Sherry"くらいであると言えるでしょう。
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香り
- 第一印象
穀物とハーブ感,レモン&ライム,香ばしいナッツ
ボディはミディアムライトだが,アルコール感は少し感じる
- 経時変化で見える要素
バニラ,はちみつ,薄くスモーク感,やや酸味っぽさ
筆者の一言
香りは非常に軽快であり,柑橘・穀物・ハーブの3要素が比較的強く出ていた印象です。
どことなく感じ取れるうっすらとしたスモーク感が適度な個性を表現しており,意外にも奥深さを感じる興味深い構成でした!
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味わい
- 第一印象
ビターオレンジ&トロピカル,スイートな麦芽感,香ばしいナッツ
ボディは比較的軽く,ピリッとくるアルコール感が多少残る
- 経時変化で見える要素
バニラの鞘,木やカカオの苦味,うっすらとスモーク感,やや果物系の渋み
- 余韻に残る要素
木・穀類・カカオなどのビター感,ハーブ&スパイス
筆者の一言
ボディの軽さからか,ファーストアタックは水のように軽快で,すんなりと受け入れられました。
そして柑橘・麦芽・ナッツなどの華やかな主張を経て,余韻にかけて多彩な苦味が強く出てくる構成であり,ハイランドモルトらしい個性が感じられます!
「フェッターケアン12年」総評
最後に総評に入りたいと思います!まずはレーダーチャートから!
さてさて、気になる点数は…
点数の理由と評価
- 香り:4/5|味わい:3/5
『フェッターケアン12年』の香りと味わいについては,どちらもアルコールの刺激がやや残ってはいるものの,甘みから苦味,そしてうっすらとしたスモーク感までもを感じることができ,多様性犇くハイランドモルトらしいテイストでした。
しかし度数40%の加水タイプであり,かなりライトな酒質であったため,一つ一つの要素をゆっくり・ハッキリと感じることが難しく,早々にビターな余韻にキレていってしまった所が若干のマイナスポイントですね。
個人的にはストレートで飲むよりも,刺激感を低減するために少量の加水を行うか,華やかな要素を活かすためにハイボールにして飲むのに適しているかな,といった印象でした。
- 初心者向け度:3/5
続いて初心者向けかどうかという観点で『フェッターケアン12年』を見てみると,適さないとは言わないが他に最適なボトルがあるといった感じです。
やはりフェッターケアンは未だメジャーなブランドとはなっておらず,初心者に向けたウイスキーのとっかかりにはややキャラ立ちが薄い印象。これは味わいも同様であり,飲みやすさに特化している訳でもなければ,分かりやすい訳でもなく,やや押しが弱いように感じてしまいました。
よって初心者に対しては,シングルモルトならばスペイサイドモルトのような分かりやすく華やかで飲みやすいものや,フェッターケアンとの繋がりを鑑みれば,ブレンデッドウイスキーの”ホワイト&マッカイ”などを,先んじてオススメしたい所です。
- 入手性:4/5|コスパ:3/5
最後に『フェッターケアン12年』のコスパと入手性については,入手性はまあまあ良心的,コスパはちょっと微妙寄りといった感じでしょうか。
まずフェッターケアンはホワイト&マッカイのキーモルトとして活用されているため,シングルモルトとしての流通があまり多くありません。英国でのオフィシャルラインナップは数種類設けられていますが,日本に正規輸入されているのはこのフェッターケアン12年のみで,やはりマイナー感が否めません。よって店頭で見かける機会はあまり多くなく,ウイスキーの取り扱いが潤沢な酒屋さんか,通販などでの入手が主流となるでしょう。
また価格帯についても,概ね7,000円前後となっている場合が多く,この値段は美味しさというよりも,生産量の少なさに左右されているような気がしています。よって単純に風味と価格を照らし合わせてしまうと,やや微妙に思えてしまうかもしれません。しかしフェッターケアンがキーモルトを務めるホワイト&マッカイを愛飲されている方や,中度個性的なハイランドモルトを探している人に対しては,是非ともおすすめしたい1本でした。
\\ホワイト&マッカイも要チェック!//