• ブッシュミルズ蒸留所

『ブラックブッシュ』は，北アイルランドに所在するブッシュミルズ蒸留所が生産を手がける，ブレンデッドアイリッシュウイスキーになります。その発売時期の詳細は有耶無耶となっていますが，概ね50年以上前から販売されてきたブッシュミルズ蒸留所の主力ブランドでもあります。

同蒸留所は1608年に蒸留免許を付与された土地で継続的に稼働していることから，世界最古とも言われる歴史の深い蒸留所です。また単に歴史が長いだけでなく，アイルランドの蒸留所は1900年代初頭のアイリッシュウイスキー不人気の時代により，ほぼ完全に一掃されてしまいましたが，唯一生き残ってアイリッシュ業界の歴史を繋いだのがこのブッシュミルズでした。

その所有者は時代とともに変遷していますが，1988年にペルノリカール社に買収され，その後は2005年に業界最大手企業として名高いディアジオ社の傘下に治りました。そして2009年には同社の元で設備の改装が実施されており，現在は容量10トンのマッシュタンや，10基のポットスチルを備え，年間450万リットルの原酒を手がける大規模な蒸留所に生まれ変わっています。

• 製法上の特徴

『ブラックブッシュ』に使用されている原酒については，幾つか明かされている情報があります。

まずキーとなっている原酒は，100％アイルランド産の大麦を原料とし，伝統的なポットスチルによる３回蒸留を経たのち，シェリー樽とバーボン樽で最長7年間熟成された，ブッシュミルズ蒸留所のモルト原酒とされています。そこにミドルトン蒸留所製のグレーン原酒をブレンドして作られているのですが，注目すべきはそのモルト比率に高さです。通常のブレンデッドウイスキーのモルト比率は概ね2,3割程度ですが，このブラックブッシュでは”8割”とされています。

よってこのブラックブッシュでは，モルト原酒が持つブッシュミルズ蒸留所らしさと，熟成樽による華やかな個性を強く感じることができると捉えて間違いないでしょう。