記事の概要
多くの人が好印象を抱くウイスキーといえば,甘く華やかな特徴を持った「シェリー樽」熟成のウイスキーで間違いないでしょう。
しかし一括りに「シェリー樽」と言っても,実はその種類は非常に豊富であり,例えば以前に詰められていたシェリー酒が辛口なのか甘口なのか,材質はどこの木材か,そしてその樽を何回使用しているのかといった様々な条件によって,得られる風味の系統も変化してきます。
そこでこの記事では,シェリー樽で熟成されているウイスキーの中でも,ちょっとだけビターかつスパイシーな大人びた甘みを特徴としているウイスキーに着目して,全部で10本の銘柄を厳選してきましたのでそれぞれご紹介していきたいと思います。
\\執筆者情報//
初谷(はつがい)
ウイスキーに関わるあらゆる情報をまとめ,「ウイスキーを知りながらより深く楽しめる記事」を発信しています。
【Shop】ウイスキー専門店『Drinkable books』
【経歴】東京都立大卒|元公務員・ネット酒屋開業
【資格】JWRC公認ウイスキーエキスパート|ウイスキー検定2級
【その他】バンド「Candid moment」のドラマー
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ビター&スパイシーなテイストが魅力!大人びた甘みの『シェリー樽』ウイスキー10選
グレンドーワン
度数 | 40% |
容量 | 700ml |
地域・種類 | スコットランド,ブレンデッド |
ポイント
『グレンドーワン』は,スコットランドのJ&Gグラント社が生産を手がける,ブレンデッドスコッチウイスキーのブランドになります。
同社は創業当初より,グレンファークラス蒸留所の運営をメインとして家族経営が続けられている伝統的な企業であり,現在進行形でグレンファークラスを手がける傍で,リズモアブランドなども傘下に入れている実力派の企業です。またグレンドーワンブランドは,1980年代ごろから主にドイツ市場向けに発売され,その後徐々に人気を獲得して数カ国に展開されるようになりましたが,2024年の春頃のラベルデザインのリニューアルを皮切りに,日本市場にも導入されるようになりました。
ブランドのキーモルトおよびレシピについては非公開とされているものの,長い歴史を持つ同社がその幅広いネットワークを活かして多彩な原酒を調達しているとのことで,全体では20種類前後のモルト・グレーン原酒をブレンドして作られている逸品。その味わいでは,シェリー樽原酒の主張を思わせるドライフルーツのやさしい甘みや,上品かつ穏やかなピートスモーク感,そして余韻にかけて表出する深くビターなチョコレートの甘みなど,価格帯のリーズナブルさに対して,絶大な満足感が得られるコスパの良さが非常に魅力的です。
香り
ワインのタンニン感,優しい焦げピート,ドライフルーツ,コーヒー&チョコレート
味わい
ドライフルーツ,オレンジピール,樽感,ローストコーヒー,ビターチョコレート
▽
グレンアラヒー12年
度数 | 46% |
容量 | 700ml |
地域・種類 | スペイサイド,シングルモルト |
ポイント
『グレンアラヒー』は,スコットランドのスペイサイド地方に所在する,グレンアラヒー蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
同蒸留所の建物は,かつてマクダフやタリバーディンの設計も手がけてきたデルメ・エヴァンス氏によって設計されているのが特徴で,各種生産設備に関しては,工程の流れごとに自然流化が可能な高低差を設けることによって,エネルギー的な無駄が少ないのがポイント。また作られるウイスキーについては,基本的にノンピートタイプの華やかなテイストを特徴としており,長らくブレンデッド用原酒メインの体制となっていましたが,2017年に蒸留所の所有者が変更されてからは,シェリー樽原酒をふんだんに使用したシングルモルトリリースを展開したことで,一躍人気のモルトとなりました。
そしてこのグレンアラヒー12年は,同蒸留所のラインナップの中ではミドルグレード的なボトルであり,PXシェリー樽,オロロソシェリー樽原酒をメインに,ヴァージンオーク樽原酒や赤ワイン樽原酒をヴァッティングして作られている逸品。その味わいでは,同系統のウイスキーの中でも飛び抜けて強いドライフルーツの甘みや,ヘザーハニーの自然な甘み,そしてダークチョコレートのような深い甘みなど,シェリー樽熟成ウイスキーの美味しいところが凝縮されたテイストを楽しむことができます。
香り
濃密なドライフルーツ,黒糖,ウッディ,コーヒー,レーズン,バニラ,焼き菓子
味わい
圧巻のドライフルーツ,濃いカスタード,ダークチョコ,タンニン&スパイシー
▽
エドラダワー12年 カレドニア
度数 | 46% |
容量 | 700ml |
地域・種類 | 南ハイランド,シングルモルト |
ポイント
『エドラダワー』は,スコットランドの南ハイランド地方に所在する,シグナトリー社傘下の,エドラダワー蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
同蒸留所の創業は1825年と,今では老舗の蒸留所ですが,長い歴史の中で幾度もの所有者の変更があり,最終的に2002年以降はスコットランドのボトラーとして著名なシグナトリー社の傘下に治りました。そのウイスキー作りは非常に伝統的であり,マッシュタンは旧型のプラウ&レイキ式,ウォートの冷却装置はオープンクーラー,そしてコンデンサーも屋外設置のワームタブ式と,歴史の深さを感じる設備によって,古き良きを感じさせる本格的なシングルモルトが少量生産されています。
そしてこのエドラダワー12年・カレドニアは,スコットランドのシンガーソングライター「ドギー・マクリーン氏」の曲名をタイトルに据えたラインナップであり,オロロソシェリー樽で42ヶ月以上フィニッシュした原酒が,アルコール度数46%のアンチルフィルタードでボトリングされている逸品。その味わいでは,濃い色味からも想像できる圧巻なシェリー香や,やや渋みを感じる深いウッディ感,そして濃密なダークチョコレートのようなビターさなど,辛口のオロロソ由来の大人びたテイストをガッツリと楽しむことができます。
香り
芳醇なシェリー香,蜂蜜,濃密レーズン,スパイシー&ウッディ,焼きアーモンド
味わい
フルーツケーキ,濃密レーズン,ナッツ,ダークチョコレート,ウッディ,蜂蜜
▽
グレンドロナック12年
度数 | 43% |
容量 | 700ml |
地域・種類 | 東ハイランド,シングルモルト |
ポイント
『グレンドロナック』は,スコットランドの東ハイランド地方に所在する,ブラウンフォーマン社傘下の,グレンドロナック蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。同蒸留所のウイスキー作りの特徴としては,原料の大麦麦芽をノンピートタイプとしつつ,蒸留工程では低速な蒸留によって華やかな香味を持つ低沸点成分を多く確保していたり,熟成工程では,全体の約85%にシェリー樽を適用していたり,華やかかつフルーティな風味が表現されているのがポイントです。
そしてこのグレンドロナック12年は,同蒸留所の最も標準的なラインナップであり,スペイン産の最高級なオロロソとペドロヒメネスを詰めていたシェリー樽にて,12年以上の熟成が施された原酒が採用されている逸品。その味わいは,バニラやレーズンのような力強くフルボディな甘みのファーストインプレッションに始まり,余韻にかけてはビターかつスパイシーな樽感が主張を強めてくるなど,辛口と甘口の両者のシェリー樽によるバランスの良い魅力を楽しむことができます。
香り
甘い穀物,濃いレーズン,キャラメル感,シナモン,ナッツチョコ,ジンジャー感
味わい
柑橘の皮,ドライフルーツ,ショコラ感,暖かいスパイス,ナッツ,穀物系の甘み
▽
グレンタレット12年
度数 | 46.3%(リリースによる) |
容量 | 700ml |
地域・種類 | 南ハイランド,シングルモルト |
ポイント
『グレンタレット』は,スコットランドの南ハイランド地方に所在する,ラリック社傘下の,グレンタレット蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
同蒸留所のルーツを辿ると,1775年に創業されたホッシュ蒸留所の存在に行き着きますが,その200年を優に超える長い歴史の中では閉鎖や解体,所有者の変更など,様々な苦難を経験してきたことが知られており,最終的には2019年に,フランスの高級ガラスメーカーであるラリック社の傘下に治り現在に至ります。そのウイスキー作りは非常に奥深く,ノンピートとヘビーピートの2タイプの麦芽を採用しつつ,人力での攪拌を要する糖化工程や,低速で実施される蒸留工程などのとても印象的なこだわりがあり,力強くて骨格のある原酒が多く生み出されています。
そしてこのグレンタレット12年は,同蒸留所の特徴が良く反映された代表作的な一本であり,複数の樽材で作られたシェリー樽で熟成された原酒が,60樽以下のスモールバッチでボトリングされている逸品。その味わいでは,フルーツケーキのような華やかな甘みや,ビター&スパイシーさを感じる深いウッディ感,そして香ばしいナッツの要素など,スモールバッチ故に実現された,パワフルかつラグジュアリーなテイストを楽しむことができます。
香り
強力なドライフルーツ,バニラ,ウッディ,スパイシーな樽感,弱グラッシー,蜂蜜
味わい
濃密ドライフルーツ,ダークチョコレート,モルティ&クリーミー,果実感,ウッディ
▽
ザ・マッカラン12年 シェリーオーク
度数 | 40% |
容量 | 700ml |
地域・種類 | スペイサイド,シングルモルト |
ポイント
『ザ・マッカラン』は,1824年からスペイサイド地方で稼働を続け,現在はエドリントン社によって運営されている,ザ・マッカラン蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
同蒸留所のウイスキー作りでは,原料から各種製造工程までの随所に,熱く伝統的な職人魂が凝らされており,生産されるウイスキーはその上質すぎる味わいから「シングルモルトのロールスロイス」という異名がつけられるに至っています。具体的な製法の特色としては,大麦や酵母は須く華やかな香味を呈する高品質なもののみを採用し,スコットランド最小級の小型ポットスチルで丁寧に蒸留を実施。そして熟成工程では,マッカラン最大の特徴とも言えるシェリー樽の製造に関して,木材の選定からシーズニング等を含めた成形におよそ6年もの歳月をかけるなど,桁違いのこだわりっぷりがあります。
そしてこのマッカラン12年・シェリーオークは,蒸留所を代表する最もスタンダードなボトルであり,全期間を最高品質のシェリー樽で過ごした貴重な原酒のみによって構成されている逸品。その味わいでは,シングルモルトのロールスロイスという異名に相応しい,エレガントに煌めく宝石のようなドライフルーツ感や,力強くスパイシーなウッディ感など,圧倒的な存在感を楽しむことができます。
香り
砂糖漬けフルーツ,強くウッディな苦味,バニラアイス,ジンジャー,カラメル感
味わい
ドライフルーツ,ウッディ,フローラル,ビターキャラメル,ジンジャー,木の煙
▽
タムドゥー15年
度数 | 46% |
容量 | 700ml |
地域・種類 | スペイサイド,シングルモルト |
ポイント
『タムドゥー』は,スコットランドのスペイサイド地方にて1897年に創業され,現在はイアンマクロード社が運営している,タムドゥー蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
同蒸留所は,1900年代中頃や2010年から2012年の間など,一時的に閉鎖されていた時期がありましたが,高品質なシェリー樽のみを活用した生産スタイルは継続されており,その原酒はシェリー系の風味を個性としている人気のブレンデッドウイスキーである,フェイマスグラウスのキーモルトとして採用されていることでも有名です。またそのシェリー樽についても,より強い樽の要素を原酒に付与することで知られているファーストフィルの樽がふんだんに使用されており,非常に豊かな果実の甘みを持ったウイスキーが多く生産されています。
そしてこのタムドゥー15年は,同蒸留所のミドルグレードに位置するラインナップであり,ファーストフィルとリフィル,そしてアメリカンオークとヨーロピアンオークの,多彩なシェリー樽で熟成された原酒が使用されている逸品。その味わいでは,シナモンのスパイスを感じるアップルパイの甘みや,濃密なレーズンの大人びた甘み,そして香ばしくドライなナッツの要素など,まさに高級感満載としか形容できないような贅沢な風味を楽しむことができます。
香り
シナモンアップルパイ,濃密なレーズン,ケーキのスポンジ,オレンジジャム,木
味わい
ラズベリー&オレンジ,濃密なレーズン,極甘バニラ,ビスケット,アーモンド
▽
ボウモア15年
度数 | 43% |
容量 | 700ml |
地域・種類 | アイラ島,シングルモルト |
ポイント
『ボウモア』は,アイラ島中央部にあるインダール湾の東岸に所在する,サントリー社傘下のボウモア蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
同蒸留所では,自社が所有するピート採掘場から採取したピートによる,スモーキーなウイスキー作りが行われていますが,このピート採掘場はアイラ島の中ではやや高地にあり,アイラ島南岸部のピートよりも海藻の含有量が少なくなっているのがポイント。これによってボウモアのウイスキーでは,海藻のような強烈なヨード香よりも,柔和かつドライなスモーキーテイストが強く表現されており,その個性的ながらも優しさのある風味から「アイラの女王」の異名が付けられています。
そしてこのボウモア15年は,同蒸留所のミドルグレードに位置するラインナップであり,バーボン樽で12年間の熟成を経たのち,オロロソシェリー樽で3年間フィニッシュされた原酒が使用されている逸品。その味わいでは,ダークチョコレートや濃密なレーズンのような大人びた甘さや,力強く苦味のあるウッディ感,そしてシェリー樽由来の華やかな果実の甘みなど,穏やかなスモーキー感と大人びた華やかさのバランスが心地よい,円熟したテイストを楽しむことができます。
香り
ドライなピートスモーク,ダークチョコ,レーズンの渋み,ウッディ,仄かな潮風
味わい
土系のピートスモーク,コーヒーの苦味,スパイシーなウッディ感,濃いレーズン
▽
アベラワー アブーナ
度数 | 約60%(リリースによる) |
容量 | 700ml |
地域・種類 | スペイサイド,シングルモルト |
ポイント
『アベラワー』は,スコットランドのスペイサイド地方,スペイ川の中流域に所在する,アベラワー蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
同蒸留所の所有者は,蒸留酒業界でも2番目の事業規模を誇るペルノリカール社で,意外にもこのアベラワーは,あのグレンリベットに次いで同社に強くプッシュされているブランドであり,特にフランスではNo.1の人気を誇るスコッチウイスキーとして深く浸透しています。そのウイスキー作りでは,ノンピートタイプの麦芽及び,ベンリネス山の中腹から引いてきた清澄な水を原料とし,伝統的なポットスチルによる2回蒸留が実施されているほか,熟成ではシェリー樽をふんだんに活用するなど,非常に華やかなスタイルのウイスキーが作られているのがポイントです。
そしてこのアベラワー・アブーナは,同蒸留所の特別なラインナップのひとつであり,主にスパニッシュオークのオロロソシェリー樽原酒が,スモールバッチ&カスクストレングスでボトリングされているパワフルな逸品。その味わいでは,ドライフルーツやブラックチェリーのような深みのある果実感や,ダークチョコを感じる深くビターなウッディ感,そしてフルボディなシェリーの華やかさなど,エキゾチックかつ満足感に長けた重厚なテイストを楽しむことができます。
香り
芳醇なオロロソ感,オレンジピール,樽感,スパイシー,レーズン,ジンジャーチョコ
味わい
濃密なドライフルーツ,オークの温かみ,スパイシー,赤い果実感,ジンジャー感
▽
カバラン ソリスト オロロソシェリーカスク
度数 | 57.8%(リリースによる) |
容量 | 700ml |
地域・種類 | 台湾,シングルモルト |
ポイント
『カバラン』は,2006年に台湾で創業した,カバラン蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
同蒸留所は台湾初の蒸留所ということで,創業に際しては業界の著名人であるジムスワン博士のコンサルタントを受けており,スコットランドよりも気温が15度ほど高い台湾の亜熱帯の気候において,独自のスタイルのシングルモルト作りが展開されてきました。このような気候の下では,スコットランドのウイスキーの3分の1程度の熟成期間であっても,深くどっしりとした円熟感を得ることが可能であるため,創業からわずか4年でリリースされた第1作目のシングルモルトが,エジンバラのブラインドテイスティング大会で優勝を果たすことができ,瞬く間に世界中にその名声が轟くようになりました。
そしてこのカバランソリスト・オロロソシェリーカスクは,同蒸留所の高級ラインナップであるソリストシリーズに属するボトルであり,スペイン産のオロロソシェリー樽で熟成された原酒が使用されている逸品。その味わいでは,シェリー樽らしい濃厚なドライフルーツの甘みや,コーヒーのような上品な苦味,そしてほのかに南国を感じる軽快なトロピカルフルーツの甘みなど,王道なシェリー樽熟成ウイスキーの魅力を存分に楽しむことができます。
香り
パワフルなドライフルーツ,スパイシー,ローストコーヒー,ナッツ,ウッディ感
味わい
ドライフルーツ,ビターチョコ,ナッツ,シナモンスパイス,芳醇なオロロソ感