【特集】グレングラント蒸留所(glengrant)|立地・歴史・製法・味と種類|ウイスキーラウンドアップ

記事の概要

世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。

今回はスコットランドより「グレングラント蒸留所」になります!

Points!「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」

キーワード

イタリアで一番人気/世界シングルモルト売上ランキング代6位/カンパリ社

グレングラントの特徴

飾り気がない/クリーンなフルーティ/柑橘系/フローラル/ナッティ/モルティ/仕込み水由来の僅かなピート感

グレングラント蒸留所

グレングラント蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。

蒸留所の概要

創業年1840年
所有会社カンパリ・グループ社
地域分類スコットランド
スペイサイド ローゼス地区
発酵槽オレゴンパイン製10基
ポットスチル初留4基・再留4基
仕込み水グレングラント川
ブレンド先シーバスリーガル パスポート
サムシング・スペシャルなど

「グレングラント蒸留所」蒸留所の立地

立地について

グレングラント蒸留所はスコットランドのスペイサイド,ローゼス地区に位置しています。ローゼスの町はポットスチルメーカーとして有名なフォーサイス社があることでも知られている町ですね!

あまり規模の起きい町ではありませんが,現在では4つの蒸留所が密集して操業している,ウイスキー文化の発展した町でもあります。

蒸留所名には地名等がつけられることが多いですが,グレングラントは創業者のグラント兄弟を名前の由来としています。グレンは「」を意味しているので,直訳ではグラント兄弟の谷といったところでしょうか!

「グレングラント蒸留所」蒸留所の歴史

グレングラント蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!

西暦年内容
1839年ジョンとジェームズのグラント兄弟によってグレングラント蒸留所が建設される
1851年鉄道の普及に貢献したジェームズ氏の功績を讃えて機関車にグレングラントの名が付けられる
1872年ジェームズ・グラント氏が亡くなる
蒸留所は息子のジェームズ・グラント・ジュニア(通称メジャー・グラント)に引き継がれる
1898年メジャーグラント氏が蒸留所近傍にキャパニック蒸留所を建設する
1900年電気を熱源とした特殊な形状のポットスチル精留器を業界で初めて導入する
1931年メジャーグラント氏が亡くなる
彼の孫にあたるダグラス・マッケサック氏が蒸留所を引き継ぐ
1952年マッケサック氏がグレンリベットを運営するスミス家と提携して,グレンリベット&グレングラントディスティラリー社を形成する
1970年同社はヒル・トンプソン&Co社及びロングモーン蒸留所と合併して,グレンリベットディスティラーズ社が形成される
1973年ポットスチルが2基増設されて6基体制となる
1977年蒸留所がシーグラム社によって買収される
2001年ペルノリカール社がシーバスグループ(シーグラム含む)を買収する
2005年蒸留所がイタリアのカンパリ社によって買収される
2007年ブランドの刷新が行われる

”メジャー”グラントの功績

かつてスペイサイド産のウイスキーは単一の括りではなく,ハイランドモルトの一種に数えられていました。作られるウイスキーも現在のスペイサイドモルトのように華やかなものが主ではなく,ピーティでどっしりとしたものが多かったのです。

メジャーグラント氏はそんなハイランドモルトのイメージを敬遠しており,華やかでフルーティなモルトを理想としていました。そこでメジャー氏は電気を熱源とした,ネックの長い特徴的な形状のポットスチルを導入し,合計8基のスチル全てにピュリファイヤー精留器)を取り付けることで,その理想を実現させることとなりました。

そんな背景があり,メジャー氏が作り上げたグレングラント非常に華やかな酒質を特徴とした今日のスペイサイドモルトの基礎を形作った,非常に歴史的価値の高いものであると言えるでしょう!

精留器

ピュリファイヤー(精留器)はラインアームの中に設置される円筒形の導管のことです。

この装置の役割は,端的には温度差を利用してアルコール蒸気を選別することであり,具体的には比較的低温で液化するヘビーな酒質を産む蒸気をここで液化させます。そしてその液体はスチルの内部へと還流されるのです。

つまり精留器を設置することで,重厚でクセのある要素のみが削ぎ落とされ,軽やかかつクリーンでエステリーな成分のみをニューポットとして厳選できるようになるのです!

イタリア

グレングラントは2006年にイタリアのカンパリ社によって買収されましたが,実はこの前からもイタリアでは大人気の銘柄でした。

No.1人気であることはもちろん,そのシェア率はなんと70%と圧倒的。イタリアではシングルモルトといえばグレングラントと言われる程でした。関係があるかはわかりませんが,イタリアのカンパリ社の所有となったのも何となく納得ですね!

ちなみに世界でも売上ランキング第6位に輝く超メジャーブランドになります。

「グレングラント蒸留所」製法の特徴

製麦

グレングラント蒸留所では1971年まではドラム式モルティングにて自社製麦を行っていました。1940年代までは蒸気を動力としていましたが,以降は電気操作に変更されていました。

現在はマレー海岸のバッキー周辺の専門業社から,ノンピートタイプのモルトを購入して使用しています。

このモルトをモルトミルで粉砕してグリストとしたのち,糖化の工程へと進みます!


糖化

グレングラント蒸留所では仕込み水にグレングラント川の水を採用しています。マッシュタンは12.3トンのグリスト容量を誇るセミロイタータンになります。

グレングラント川はピート層を浸透してきた水で構成されており,色味の濃いピートらしい風味を有しているのが特徴的です。

マッシュタンにグリストを投入したのち,加熱した仕込み水を複数回に分けて,温度を上げながら注ぐことで糖化が進められます。糖化が完了すると糖分を多分に含んでおり,クリアな色味をしたウォートを得ることができます。

次の工程は発酵になります。

出典:googlemap

発酵

グレングラント蒸留所には容量60000リットルでオレゴンパイン製のウォッシュバックが10基設置されています。酵母にはマウリ社製のものを採用されています。

冷却したウォートと酵母をウォッシュバックに投入することで発酵が進められます。発酵にかける時間は48時間とスコッチでは標準的な時間が設定されています。

発酵が完了するとアルコール度数約8%のもろみが完成しています。

次の工程は蒸留になります。

出典:googlemap

蒸留

グレングラント蒸留所には容量15,000リットルのウォッシュスチルが4基,容量10,000リットルのスピリットスチルが4基設置されています。ポットスチルの加熱は電気を熱源とし,冷却方式はシェル&チューブ方式が採用されています。

スチルはどれも特殊な形状をしたストゥーパ型であり,背が高く精留器が装備されています。そのため非常に軽やかでクリーンな風味を得ることができます。

初留から再留,ミドルカットを終了した時点でアルコール度数68%のニューポットが完成します。

次の工程は熟成になります!

出典:googlemap

熟成

グレングラント蒸留所には敷地内にダンネージ式の倉庫が7棟あり11,500樽が収められています。また隣接するロセスにも数棟のウェアハウスがあります。またシーバスリーガルの原酒となる分はシーバスの倉庫にて熟成されるため,樽詰め後に輸送されます。

熟成に使用される樽はバーボン樽シェリー樽が主になります。原酒を詰めたバーボン樽は蒸留所敷地内のウェアハウスに,原酒を詰めたシェリー樽は敷地外のウェアハウスに安置されます。

またニューポットは樽詰め前に加水をすることで63.5%に調整されています。

出典:whisky.com

オフィシャルボトル一覧

グレングラント蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!

グレングラント アルボラリス

ポイント

アルボラリスはラテン語で「木漏れ日」を意味しており,ノンピート麦芽を原料とし,バーボン樽とシェリー樽で熟成させた原酒がバランス良くブレンドされています。

味わいも木漏れ日のように淡くも美しい華やかなニュアンスを感じ取ることができます。

またコスパが非常に良く,スコッチのシングルモルトの中では最安ラインでありながら,超王道のスペイサイドモルトを感じることができます!飲みやすいので初心者にも全力でオススメしますよ!

ー特徴ー

価格帯

Amazon:2,475円

※2022年7月現在

香り

フローラル/柑橘系フルーティ/レーズン/オークの甘さ/とても華やか

味わい

ドライフルーツ/フローラル/レーズン/ウッディ/バタースコッチ/洋梨/バニラ

余韻

華やかでフルーティ,適度にスパイシーな余韻が長く続く

グレングラント10年

ポイント

グレングラントの年数表記ありボトルの中で最もスタンダードな1本です!

グレングラントの持つ軽やかで飾り気のない一途なフルーティさを感じることができます。バランス感がよく万能なボトルですね!

ー特徴ー

価格帯

Amazon:3,498円

※2022年7月現在

香り

バニラ/トフィー/りんご/ハーブのような爽快感/わずかな煙たさ

味わい

濃厚な甘さ/柑橘系フルーティ/バニラ/僅かに香ばしいピート/モルティ

余韻

ドライながらトフィーの甘さと優しいスモーク感が長く残る

グレングラント12年

ポイント

12年熟成のグレングラントになります!

ノンピート麦芽のみを原料としているため非常に王道の美味しさがありますが,仕込み水に由来する僅かなピートスモークが感じられる個性的な要素も持っています。

ー特徴ー

価格帯

Amazon:5,080円

※2022年7月現在

香り

オレンジの甘さ/りんご/砂糖/華やか/フローラル/ほのかにモルティ

味わい

スムースで軽やか/柑橘系フルーティ/りんご/はちみつ/バニラ/ナッティ/モルティ

余韻

ナッティでどこか香ばしいピートスモークを感じる

グレングラント15年

ポイント

ファーストフィルのバーボン樽で15年間熟成された原酒のみをブレンドし,アルコール度数を50%という比較的高い水準で整えた力強い1本です!

グレングラントらしいフルーティさとナッティさが力強く強調されているため,濃厚なフルーティさを求めている方は是非…!

ー特徴ー

価格帯

Amazon:9,252円

※2022年7月現在

香り

繊細なフローラル/フレッシュな柑橘/りんご/はちみつ/キャラメル/ナッティ/モルティ

味わい

はちみつ/バニラ/フローラル/柑橘の甘さ/杏/ほのかにスパイシー/ナッティ/モルティ

余韻

りんごのような甘さとモルティな余韻が非常に長く続く

グレングラント18年

ポイント

ノンピート麦芽のみを原料とし,18年以上熟成させたバーボン樽原酒を主体に作り上げられた,グレングラントのフラッグシップボトルです!

グレングラントの飾らないフルーティな味わい,その真髄を少し覗いてみませんか?

ー特徴ー

価格帯

Amazon:16,145円

※2022年7月現在

香り

オークの甘さ/リッチな柑橘感/花畑フローラル/モルティ/香ばしいナッツ

味わい

熟成感がありながらスムース/ドライレーズン/はちみつ/バニラ/アーモンド/リッチ/柑橘系フルーティ

余韻

ナッティとスパイシーが圧倒的に長く続く

参考サイト:whisky.com / scotchwhisky.com / グレングラント公式