【特集】ベンリネス蒸留所(benrinnes)|場所・歴史・製法・味と種類|ウイスキーラウンドアップ

記事の概要

世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。

今回はスコットランドより「ベンリネス蒸留所」になります!

Points!「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」

キーワード

ディアジオの異端児/花と動物

ベンリネスの特徴

ノンピート/シェリー樽/フルーティ/甘い/ボデイが超重厚/複雑な香り

ベンリネス蒸留所

ベンリネス蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。

蒸留所の概要

創業年1826年
所有会社ディアジオ社
地域分類スペイサイド
スペイ川中流域
発酵槽オレゴンパイン製8基
ポットスチル初留2基・再留4基
仕込み水スカーラン川
ローワンツリー川
ブレンド先ジョニーウォーカー
J&Bなど

ベンリネス蒸留所の立地

立地について

ベンリネス蒸留所スペイサイド最高峰のベンリネス山の麓、標高213mの場所に位置しています。

もともとは現在に位置から1キロ南東のホワイトハウス農場に建設されていましたが、洪水で破壊されたことをきっかけに現在の場所に移されました。

唯一のオフィシャルボトルである花と動物シリーズのボトルには、ベンリネス山に生息する黒ライチョウが描かれています。

ベンリネス蒸留所の歴史

ベンリネス蒸留所の歴史を年表形式でまとめていきます!

西暦年内容
1826年ピーターマッケンジーによってベンリネス蒸留所が創業される
1829年蒸留所が洪水で破壊される
ジョン・イネスによって現在の場所に蒸留所が移設される
1834年ジョンが破産する
蒸留所はウィリアムスミス&Co社によって買収される
1864年ウィリアムスミス&Co社が破産する
蒸留所はデビッド・エドワードによって買収される
1896年火災によってスチルハウスなどの設備が消失する
蒸留所の改修が行われる
1922年蒸留所がジョンデュワー&サンズ社によって買収される
1925年会社合併により所有者がDCL社となる
1955年DCL社のもとで蒸留所の改装が行われる
モルティングフロアはサラディンボックスへと置き換えられる
1966年ポットスチルが3基から6基に増設される
1974年部分的に3重蒸留と呼ばれる蒸留技法を導入する
1984年サラディンボックス式の製麦設備が廃止される
原料のモルトは専門業社より仕入れるようになる
1991年15年熟成のボトルが花と動物シリーズとして公式リリースされる
2007年3重蒸留を廃止し、一般的な2回蒸留を導入する

ベンリネス蒸留所 製法の特徴

製麦

ベンリネス蒸留所では1955年までは伝統的なフロアモルティングを、1984年まではサラディンボックス式のモルティングを行っていました。

1984年以降は自社モルティングを廃止し、UD社の製麦業者からノンピートのモルトを購入しています。

モルトはモルトミルにより粉砕してグリストとしたのちに、糖化の工程へと移ります。


糖化

ベンリネス蒸留所では、仕込み水にはスカーラン川ローワンツリー川の水を使用しています。

糖化に使用するマッシュタンは、容量9トンのステンレス製セミロイタータンになります。

このマッシュタンに1バッチあたり8.5トンのグリストと仕込水を投入し、糖化が進められます。

こうしてクリアな色味のウォートが取り出され、発酵へと回されます。


発酵

蒸留所には容量41500リットルのオレゴンパイン製ウォッシュバックが計8基あります。

このウォッシュバックにウォートペースト状の酵母を投入し、約65〜100時間程度かけて発酵が進められます。

こうして度数8%前後のもろみが作り出され、次の蒸留工程へと移ります。


蒸留

蒸留所には容量約21000リットルのウォッシュスチルが2基、容量5000リットルと7000リットルのスピリットスチルが各2基ずつあります。

ポットスチルはどれもストレート型で、多くの蒸気が逆流することなくラインアームへと流れ出るため、重厚感のあるニューポットが生成されることになります。スチルの加熱方式は蒸気による間接加熱方式、冷却方式は伝統的なワームタブ方式になります。

蒸留時のアルコールを含んだ蒸気は、伝統的な屋外設置のらせん状ワームタブによって冷却、液化されています。

ベンリネスでは蒸留の工程に2つの特徴があります。

・蒸留のスピードが速い

蒸留のスピードが早いと、蒸留器に投入した溶液と銅が触れる時間が短くなるため、雑味を含む重い酒質が得られることになります。

・ミドルカットの下限が低いこと

ミドルカットを長めに取ることで、蒸留時の不安定な蒸気が回収されることとなるため、こちらも重い酒質となります。

ポットスチル 出典:google map

一部3重蒸留について

ベンリネスでは2007年まで独自の一部3重蒸留を行っていました。

現在では廃止されていますが、その工程を説明しておきます!

1回目の蒸留で得られたローワインは前半(1−1)後半(1−2)の2つに分ける

後半部分(1−2)を2番目のスチルで蒸留し、得られた溶液をさらに前半(2−1)後半(2−2)に2分割する

(2−1)は次回の最初の蒸留に混ぜられます。

(1−1)と(2−2)を蒸留し、ミドルカットを行って得られたハーツをニューポットとします。


熟成

ベンリネス蒸留所が熟成に使用する樽のほとんどは、ヨーロピアンオーク製のシェリー樽です。

ウェアハウスはレンガ造りの建物であり、ラック式で大量の樽が安置されています。

ウェアハウス 出典:whisky.com
ウェアハウス内部 出典:note.com

オフィシャルボトルボトル

ベンリネス蒸留所のオフィシャルボトルを紹介します!(花と動物シリーズの一本のみですが)

ベンリネス15年 花と動物

ポイント

ベンリネス蒸留所が出す唯一のオフィシャルボトルになります。

ラベルには蒸留所のほど近く、ベンリネス山荷生息する黒ライチョウが描かれています。

スペイサイドのフルーティさに、「ディアジオの異端児」という呼称にふさわしい重厚かつコク深い味わいを併せ持った唯一無二の味わいのボトルです!

ー特徴ー

価格帯

15000円前後

香り

スパイシー/シロップの甘さ/重厚な香り/オレンジ系の柑橘

味わい

リッチ/パワフルな濃厚さ/強い甘み/甘みの裏側にスパイシーさ/りんご感

余韻

優雅な軽さが続く

参考資料

参考サイト:MALTS.COM thewhiskyexchange.com scotchwhisky.com whiskyantique.com whic.de