記事の概要
管理人によるボトルのレビューを通して、皆様にその魅力を伝える記事です。
今回は…
「ダッズハット ライ
スイートベルモットフィニッシュ」
当記事では,このボトルについて
などなど詳しく解説していきます!!
\\執筆者情報//
初谷(はつがい)
ウイスキーに関わるあらゆる情報をまとめ,「ウイスキーを知りながらより深く楽しめる記事」を発信しています。
【Shop】ウイスキー専門店『Drinkable books』
【経歴】東京都立大卒|元公務員・ネット酒屋開業
【資格】JWRC公認ウイスキーエキスパート|ウイスキー検定2級
【その他】バンド「Candid moment」のドラマー
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「ダッズハット」ってなに?
ダッズハットの解説
『ダッズハット(Dad's Hat)』は,アメリカのペンシルベニア州にある蒸留所で作られる”ライウイスキー”のブランドになります。
- ブランドの始まり
ライウイスキーは20世紀初頭の禁酒法以前,比較的米国に広く浸透していたことが知られており,事実1810年頃のペンシルベニアにおいては年間600万ガロン(約2,300万リットル)にも及ぶライウイスキーが製造されていました。
しかしながら1920年に米国で禁酒法が施行されると,密造業社の暗躍によって多くの粗悪ライウイスキーが世に出回ってしまい,その人気は失墜。禁酒法解禁後もその需要の回復がイマイチとなっていました。
そこから時は経ち2006年のこと,子供時代をバーの上の住居で過ごし,オールアメリカンスピリッツに対する熱量を持っていたハーマン・ミハリッチという人物が,独自のライウイスキー蒸留所の創業を想起。
そして2011年にはついに,ライウイスキーを製造するクラフトディスティラリーが,1990年以降で初めてペンシルベニア州で稼働をはじめました。
- ウイスキーの製造
『ダッズハット』では,200年以上の歴史を持つアメリカンスピリッツの伝統を重んじ,古典的な”ペンシルベニア・ライ・ウイスキー”を作ることが,主題に掲げられています。
古典的な要素が最も表れているのは”ライ麦80%・大麦麦芽15%・ライ麦芽5%”というマッシュビルであり,それらの穀物は全て地元の農場から仕入れたもの。
そして温度管理が可能な先進的な発酵槽で1週間程度の発酵を実施し,サイドカラムを備えた伝統的なポットスチルで蒸留することにより,高品質なライウイスキーが生産されています。
ハンドクラフトの少量生産ではありますが,そのウイスキー作りにまつわる技術力は確かなものがあり,2020年のIOWでは”クラフトプロデューサー・オブ・ザ・イヤー”にも輝いています。
「ダッズハット ライ スイートベルモットフィニッシュ」ボトルの特徴
\\ボトル外観//
\\ボトル諸元//
ボトル名 | ダッズハット ライ スイートベルモットフィニッシュ |
地域 | アメリカ,ペンシルベニア州 |
種類 | ライウイスキー |
原料 | ライ麦,モルト,ライモルト |
容量 | 700ml |
度数 | 47% |
\\製法と特徴//
- ライ麦80%・麦芽20%の伝統的なマッシュビル
▶︎アメリカンウイスキーらしいライ麦由来のスパイシーさと,滑らかな舌触りがしっかりと表現されている - チャーしたオーク樽で6ヶ月間熟成
▶︎アメリカンウイスキーらしい力強い香味,そして濃厚な琥珀色のウイスキーが仕上がる - スイートベルモット樽で3ヶ月のフィニッシュ
▶︎稀有なアメリカンベルモット樽を熟成に採用し,ライのスパイシーさと共に,温かみと繊細な甘さを持ったベルモットの要素が添加されている - ワインエンスージアスト誌の2015年TOP100スピリッツに選出
▶︎少量生産のクラフトディステイラリーながら,生産されるウイスキーは確かな評価を獲得している
「ダッズハット ライ スイートベルモットフィニッシュ」テイスティングレビュー
さてさて、それでは早速「ダッズハット ライ スイートベルモットフィニッシュ」をテイスティングレビューしていきます!
色味
『ダッズハット ライ スイートベルモット』の色味については,かなり濃いように見え,やや赤みがかっている印象があります。
客観的な指標としてwhiskys.co.ukの色見本に準えて評価すると,"Mahogany Henna Notes"くらいであると言えるでしょう。
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香り
- 第一印象
極甘エステリー,柑橘風味の飴玉,花のフローラル感
アルコール感はあまりない
- 経時変化で見える要素
シナモンスパイス,バニラ,甘く濃厚なウッディ感,スパイシーなライ麦感
筆者の一言
香りは全体的に極甘といった感じで,かなり飲みやすい印象。
アメリカンライウイスキーらしさがしっかりとありながら,甘口ベルモット樽由来の果実系の甘みが強く出ています。
▼
味わい
- 第一印象
強力な入浴剤系のフローラル感,柑橘風味の飴玉
アルコール感は許せる程度
- 経時変化で見える要素
溶剤系エステリー,胡椒系スパイシー,繊細な果実香,バニラ
- 余韻に残る要素
ウコン感,ビターな木,うっすらと果実味
筆者の一言
味わいでは,まさに入浴剤としか形容できないようなフローラル感が強く出ているのがとても印象的。
アメリカンウイスキーらしい溶剤感やバニラ感もしっかりあるのが,コイツの面白さを助長していますね。
独特な個性に作り手の強いこだわりが感じられる,非常に素晴らしいライウイスキーでした!
「ダッズハット ライ スイートベルモットフィニッシュ」総評
最後に総評に入りたいと思います!まずはレーダーチャートから!
さてさて、気になる点数は…
点数の理由と評価
- 香り:4/5|味わい:3/5
『ダッズハット ライ スイートベルモットフィニッシュ』の香りと味わいについては,ニッチなライウイスキーというジャンル,そして稀有なベルモット樽フィニッシュということで,かなり尖った個性を持っていた印象です。
アメリカンライウイスキーらしいエステリー感やスパイシー感は確かにありますが,特に味わいで感じられた入浴剤のようなフローラルな華々しさがとにかく強力。
1年に満たない熟成機関でありながら,アルコール感をあまり感じさせないほどの強い香味は,他では味わうことができないパンチを持った唯一のテイストであったと言えるでしょう。
- 初心者向け度:2/5
続いて初心者向けかどうかという観点で『ダッズハット ライ スイートベルモットフィニッシュ』を見ると,あまり適しているとは言い難そうです。
というのも前述の通りにライウイスキー&ベルモット樽というのは,他ではみられない超ニッチなジャンルになりますので,初心者のうちは,王道のスコッチや有名なバーボンなどのもう少しわかりやすいところから攻めたほうがいいように思いました。
また,もしもライウイスキーにチャレンジしたいと思っている方がいらしたら,まずは”オールドオーバーホルト”あたりから試してみるといいのではないでしょうか。
- 入手性:2/5|コスパ:2/5
最後に『ダッズハット ライ スイートベルモットフィニッシュ』のコスパと入手性について見てみると,どちらもそこまで良いとは言えなさそうです。
まずライウイスキー自体がややマイナーよりであり,尚且つダッズハットは少量生産のクラフトディスティラリーとなっているため,店頭で見つける機会がやや少ない印象。
とはいえウイスキーの取り扱いが多い店や,通販などでは,まあまあ見つかる程度なので,入手性はクリティカルな欠点にはないと言えるでしょう。
またコスパについては,概ね8,000円程度と金額の絶対値で見るとやや高めに感じます。
稀有なベルモット樽フィニッシュを施したライウイスキーということで,一飲の価値は十分にありますが,味と金額を照らし合わせると,やや躊躇してしまうしれません。