記事の概要
管理人によるボトルのレビューを通して、皆様にその魅力を伝える記事です。
今回は…
「アードナッホー5年」
当記事では,このボトルについて
などなど詳しく解説していきます!!
\\執筆者情報//
初谷(はつがい)
ウイスキーに関わるあらゆる情報をまとめ,「ウイスキーを知りながらより深く楽しめる記事」を発信しています。
【Shop】ウイスキー専門店『Drinkable books』
【経歴】東京都立大卒|元公務員・ネット酒屋開業
【資格】JWRC公認ウイスキーエキスパート|ウイスキー検定2級
【その他】バンド「Candid moment」のドラマー
各種SNSも運用中!
「アードナッホー」ってなに?
アードナッホーの解説
- アードナッホー蒸留所の特色
『アードナッホー蒸留所』は,スコットランドのボトラーとして著名なハンターレイン社が,2018年にアイラ島で創業させた島内9番目の蒸留所になります。その立地はアイラ島の東岸側,ポートアスケイグ港の北側となっており,ちょうどカリラ蒸留所とブナハーブン蒸留所の中間くらいの場所に所在しています。
同蒸留所は所有者が知見豊富なボトラー企業ということもあり,新興蒸留所でありながら,伝統と個性を感じさせるこだわりの製法が採用されているのもポイント。例えば原料の麦芽は無論アイラ島らしくフェノール値40ppm程度のヘビリーピーテッドスタイルとされていたり,木製のウォッシュバックによる70時間程度の長時間発酵を行っていたり,地域の魅力を反映するような工夫が見て取れます。
加えて蒸留時に使用されるポットスチルについては,容量が1万リットルを超える1対2基の大型のスチルが採用されている他,コンデンサーはアイラ島内で唯一となる,伝統的な屋外設置のワームタブ式とされている点も興味深いところ。このような設備では,アルコール蒸気が触れる銅の表面積が十分に確保されているため,蒸留工程ではすっきりとした香味の醸成が行われいていると推察できます。
執筆時点(2024年夏)において,蒸留所は創業から約6年が経過したこととなりますが,遂に今年より待望のファーストリリース『アードナッホー イノーギュラルリリース 5年』が発売されることとなりました。こちらはバーボン樽原酒80%・オロロソシェリーホグスヘッド原酒20%の構成で作られているとのことで,熟成年数は5年とされています。
上平発表当初のニュースでは5月下旬頃より順次国内流通開始とのことでしたが,概ね今月7月に発売を開始した店舗が多いような所感を受けます。総生産本数は世界全体で80,000本とのことですが,現在国内に流通しているのは航空便で輸入された最速到着の「By AIR」のボトルたちであり,こちらは国内入荷数600本らしいので,かなりリミテッドなアイテムとなっています。一応今後秋ごろには船便のボトルたちも続々と到着する見込みであり,金額的には最速到着の「By AIR」よりも安めでの発売となるようですので,こちらも併せて注目してみましょう!
「アードナッホー5年」ボトルの特徴
\\ボトル外観//
\\ボトル諸元//
ボトル名 | アードナッホー イノーギュラルリリース5年 |
地域 | スコットランド アイラ島 |
種類 | シングルモルト |
容量 | 700ml |
度数 | 50% |
原酒諸元 | バーボン樽80% シェリー樽20% |
\\製法と特徴//
- フェノール値40ppmのヘビリーピーテッドスタイル
▶︎アイラ島らしい強力なスモーキーテイストが表現されていると考えられる。また立地的にも南岸のモルトのような薬品臭はそこまで強くないと考察できる。 - 容量1万リットル以上の大容量ポットスチル
▶︎容量の大きなポットスチルでは,アルコール蒸気がスチル内面の銅材と接触する機会が増大し,不快な香味の除去が進行しやすくなる。 - 伝統的な屋外設置のワームタブ式コンデンサー
▶︎屋外設置式のワームタブでは,蒸気が銅製の蛇管を流下する時間が増大するため,こちらも深いな香味の除去が進行しやすくなる。
「アードナッホー5年」テイスティングレビュー
さてさて、それでは早速「アードナッホー5年」をテイスティングレビューしていきます!
色味
『アードナッホー5年』の色味については,ちょうど中程度くらいの濃さに見え,ほのかな温かみを感じるゴールドといった様相です。客観的な指標としてwhiskys.co.ukの色見本に準えて評価すると,"Burnished"くらいであると言えるでしょう。
▼
香り
- 第一印象
ややヨーディーなピートスモーク,煮詰めた柑橘ジャムの甘み,潮風と穀物の香ばしさ
アルコール感はない|煙たさは意外に優しい
- 経時変化で見える要素
フレッシュなりんご感,バニラビーンズ,エステリーな木材感,ジンジャースパイス,焚き火系焦げスモーク
筆者の一言
香りは想像よりも優しさやフルーティ感が強く出ており,若さゆえの刺激感があまり出ていなかった印象。アイラ島らしいスモーキー感もありますが,やや内陸よりの風合いとなっていました!
▼
味わい
- 第一印象
沿岸過ぎないドライなピートスモーク,煮詰めた柑橘の果実感,シナモンアップルの甘み
アルコール感は年数相応|香りよりも煙たさを強く感じる
- 経時変化で見える要素
甘いバタークッキー,エステリーな木材感,塩気を感じる潮風,蜂蜜の自然な甘み,ジンジャースパイス
- 余韻に残る要素
カカオ95%チョコの苦味,入浴剤系のフローラル感
筆者の一言
味わいでは香りよりも強くスモーキーテイストが感じられ,完全新規なアイラモルトらしさを体感しました。しかし華やかな柑橘感も残存しており,こちらは他のアイラモルトとの関連も感じるアイラ島らしさが出ていてとても感動しました…!
「アードナッホー5年」飲み方について
さて、ここまではストレートにてボトルのレビューをしてきました。そこで「アードナッホー5年」はどの飲み方が一番美味しいのでしょうか。王道の飲み方である「トゥワイスアップ・ロック・ハイボール」の3種類で比較してみましょう!
飲み方について深く掘り下げた記事も書いているのでご参考までにリンクを貼っておきます!
ハイボール
おすすめ度 ▶︎ 5/5
トゥワイスアップ
おすすめ度 ▶︎ 4/5
ロック
おすすめ度 ▶︎ 5/5
「アードナッホー5年」総評
最後に総評に入りたいと思います!まずは風味の各要素をグラフ化してみてみましょう!
さてさて、気になる点数は…
点数の理由と評価
- 香り:5/5|味わい:4/5
まず『アードナッホー5年』の香りに関しては,5年熟成という比較的若いモルトであり,度数も50%あったにも関わらず,アルコールの刺激感が皆無だったことに衝撃を受けました。また煙たさもかなり優しく,近所のカリラに通づるようなおしゃれな柑橘感が出ている点も非常に好印象でした。
また味わいについては,香りよりもアルコール感が少々残り,要素の中心はアイラモルトらしいパワフルな煙たさとなっているのが印象的でした。しかしこの煙たさは,アイラ島南岸のアードベッグやラフロイグの薬品感の強いものとは少々異なり,どちらかといえばボウモアやキルホーマンなどの内陸寄りのアイラモルトに通づるものとなっており,穏やかな優しさが感じられました。
- 初心者向け度:1/5
続いて初心者向けかどうかという観点で『アードナッホー5年』を見てみると,全く適していないです。
レビューでは優しさが目立つと纏めましたが,やはりヘビリーピーテッドスタイルの個性特化型なアイラモルトであることには間違いなく,このアードナッホーも世間一般的に初心者に勧めてはならないと言われるスモーキーな風合いとなっています。
しかしアイラモルトの中では薬品臭が卓越しているわけではなく,フルーティな要素も色濃く出ていることから,同系統のウイスキーの中では入門にも選びやすい銘柄となってくるのではないかなといった所感を受けました。
- 入手性:2/5|コスパ:2/5
最後に『アードナッホー5年』の入手性とコスパにつきましては,入手性はあまり良くない,コスパもあまり良くないといった感じです。
まず入手性に関しては,現在の流通品が航空便で日本に到着した「By AIR」のボトルで,国内出荷数が600本に限られているということで,入手の機会は非常に限られてくると考えられます。しかし今後の船便で入荷するボトルも併せて考えれば,いくらか入手の機会が伺えそうなところではあるので,欲しい方は今後の動向にも注目すると良いかと存じます。
続いてコスパについては,まずこの「By AIR」のボトルの価格が概ね税込19,000円程度となっており,これは味わいと照らし併せて考えた時には少々割高に感じてしまうところでした。無論世界初のファーストリリースということで,新作を最速で飲める機会が今だけであり,生粋のアイラモルトファンの方々にとっては迷いなく購入した代物だと思いますので,この「世界初」というところに興味を持てる人には,コスパ感覚度外視で是非手に取っていただきたいと思いました。
なお秋ごろにやってくるであろう船便のボトルたちは,この「By AIR」のボトルよりも価格が若干安くなっているらしいので,最速に興味がない人はそのタイミングでの購入を図ると良いでしょう!